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特殊詐欺の犯行実態を包み隠さずに話した 「息子と同年代。更正して」と被害女性の優しい言葉 まだ納骨できていない亡き母の姿が重なった 〈かごしま法廷傍聴記〉 

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南日本新聞

 窃盗罪に問われた40代後半の男は白髪交じりのオールバックで、ぎょろりとした目が印象的だった。警察官になりすまし、高齢者からキャッシュカードと現金を盗んだ特殊詐欺グループで、奪った金の分配を指示するなど中心的な役割を担っていた。 【写真】特殊詐欺グループで中心的役割を担っていた男。スマホにはメンバーの報酬を示す数字が残っていた(本文と写真は関係ありません)

 風俗店のドライバーで生計を立てていた1年ほど前、フィリピン人女性と結婚するため現地に渡った。そこで日本人の男に誘われ、特殊詐欺に関わるようになった。唯一の身内だった母親が亡くなり、葬式を挙げようと帰国した空港で逮捕された。捜査段階から一転、公判では罪を認め、検察官の質問によどみなく答えていた。  被告を含むフィリピン在住の詐欺集団メンバーが手分けし、インターネット上の住所録を基に電話をかける。警察官らを装い、「あなたの口座から不正に金が引き出されている。キャッシュカードを作り替える必要がある」。こう持ち掛けた後、日本にいる警察官役の受け子が被害者宅を訪れカードを受け取り、別のメンバーが金を引き出した。  「受け子とその紹介者が10%、経費を引いた残りの5~10%を基本給として各メンバーに支払う。電話をする警官役には別途10%」。奪った金の配分も包み隠さずに話した。グループが使っていた通信アプリのチャットの履歴には、それぞれの“報酬”を示す数字が生々しく残っていた。チャット内で仮名だったメンバーの実名まで全て明らかにした。

 なぜ犯行の実態を暴露する気になったのか。「弁護士を通じて、『息子と同年代だから頑張って更生してほしい』と言ってもらえた。申し訳ない。そこまで優しい人がいるなんて」。弁護人に問われた男は70代の被害女性に様を付けて呼び、言葉を詰まらせた。  続けて「お母さんが生きていたら(今回の犯罪を)何と言うか」と聞かれ、「年寄りをだますようなことをするなと」と答えながらトレーナーの裾で目元を拭った。まだ納骨できていないという。  謝罪文には「もし自分の母が被害に遭っていたら、怒りを抑えられない」と、被害女性と自身の母親を重ねた一節もあった。起訴された事件での“報酬”は16万円余り。それをはるかに上回る額を被害者に弁償した。  判決公判には丸刈りで臨んだ。懲役3年、執行猶予5年-。判決を言い渡されると、男は裁判官や弁護人に何度も頭を下げるようなしぐさを見せた。  裁判官は「基本的には実刑にすべき事案」としつつ、供述態度や被害弁償、出廷した飲食店経営の旧友が店で雇い、寝食を共にして監督すると誓ったことも踏まえ、更生の余地があると判断した。

 男が法廷で流した涙は本物だったのか。今後、亡き母に恥じない生き方をしていけるのだろうか。

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