<経営者・編集長インタビュー> 滝沢秀之 相鉄ホールディングス社長 2021年1月12日号〈週刊エコノミスト〉
◇都心へ乗り入れで沿線を活性化 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) ―― 2019年11月にJR東日本との相互直通運転を開始して1年たちました。神奈川県が中心の相鉄沿線から、乗り換えなしで新宿に行けるようになりましたが、手応えや反響は。 滝沢 まだ分からないというのが正直なところです。利用客が新規路線へ通勤経路を変更するには3年かかると言われています。新型コロナウイルスの影響が出る前の19年12月~20年1月は想定の半分の乗客数でした。その後のコロナ禍では相互乗り入れに限らず鉄道事業はかなり落ち込みました。今後の推移は読み切れていません。 ── 新たに導入した新型車両の色も話題になっています。 滝沢 横浜の海をイメージした「横浜ネイビーブルー」という特注色です。一方からは黒く、他方からはさめた青に見えて、駅でも目立っているようです。 ―― 乗り入れに合わせ、沿線開発も進めています。 滝沢 数年前から「6大プロジェクト」を掲げて開発を進めてきました。相互乗り入れを起爆剤として、多くの人に沿線に住んでもらうことが最終的な目標です。高齢者や子供連れの夫婦も住める環境を作るため、駅周辺で集合住宅の建設や商業施設のリニューアルを進めました。 六つの計画のうち、いずみ野駅周辺の開発など三つは既に竣工(しゅんこう)しています。残る「ゆめが丘地区開発」「星川・天王町間整備計画」「鶴屋町地区再開発」が現在進行中です。特にゆめが丘の開発では、3世代のファミリー層をターゲットに約170店舗からなる大型集客施設を建設予定で、23年度下期の開業を目指しています。 ―― 本業の鉄道より小売・流通業の売り上げが大きいですね。 滝沢 商業施設の売り上げや不動産賃貸事業の利益が大きい会社です。スーパーマーケット「そうてつローゼン」を神奈川県内を中心に55店舗展開し、横浜駅周辺を中心に「相鉄ジョイナス」などの商業施設を運営して収益の柱になっています。コロナ禍で、巣ごもり消費などの需要が増えて今は追い風が吹いています。ただし、いずれは元に戻ると思うので、EC(電子商取引)など、いろいろな販売展開を強化していきたいと思っています。