父は過労死、母は車いすユーザー、弟はダウン症。令和のホームドラマ「かぞかぞ」の岸本家をもとに、母と子2人が受けられる制度を勝手に考察
作家の岸田奈美氏のエッセーが原作となるNHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(以下、かぞかぞ)を見ていると、心温まるホームドラマに涙する一方、ついつい家族の収入状況が気になってしまいます。 本記事では、ドラマや原作でもあまり触れられていない家族の経済状況について、登場人物ごとに考察します。
過労死の父
主人公の岸本七実さんの父、耕助さんは勤めていた会社を辞めてベンチャー企業を立ち上げました。ベンチャー企業は法人の形態と思われるので、社会保険が完備していたでしょう。家族は以下のように私的な生命保険のほか、厚生年金・労災保険からも給付を受けたはずです。 ・生命保険(死亡保険金) ・厚生年金(遺族厚生年金・遺族基礎年金) ・労災保険(遺族補償給付) ・団体団信用生命保険(住宅ローン免除) 厚生年金に加入していた本人が亡くなった場合、生計を維持されていた配偶者のひとみさんに対して遺族厚生年金が支給されます。また、耕助さんが亡くなったときには中学生の娘・七実さんとダウン症の障害をもつ小学生の息子・草太さんがいたので、あわせて遺族基礎年金も受給できます(原則子どもが18歳になった年度末まで受給できますが、草太さんの障害等級が2級と仮定すると20歳になるまで受給可能となります)。 また、業務が原因の過労死だったので、労災保険から葬祭料と遺族補償給付が受けられます。遺族補償給付では、残された家族の数などを考慮した上で、遺族(補償)等年金や遺族特別支給金・遺族特別年金が支給されます。ただし、遺族(補償)等年金と前述した遺族年金は併給調整があるので、それぞれ満額受け取れない場合がある点に注意が必要です。 また、住んでいたマンションの住宅ローンが残っていても、団体信用生命保険に加入していれば、遺族による返済は免除されます。
車いすユーザーの母
主人公の母である岸本ひとみさんは、耕助さんが亡くなったあと整体院で働いていましたが、大動脈解離を発症し、手術の後遺症で車いすユーザーになりました。職場で厚生年金に加入していたと仮定すると、障害厚生年金が受給できます(厚生年金に加入していなくても、障害基礎年金を受給できる可能性があります)。 ただし、障害年金と遺族年金は選択制なので、金額の大きいほうを受給することになります。遺族厚生年金の年金額が大きければ、遺族年金を受給していた可能性があります。