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マスコミの「写真で埋める」発想から、フォトエディターが守るもの ウェブ記事の増加で高まる存在意義

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連載『WEB編集者の教科書』 情報発信の場が紙からデジタルに移り、「編集者」という仕事も多種多様になっています。新聞社や雑誌社、時にテレビもウェブでテキストによる情報発信をしており、ウェブ発の人気媒体も多数あります。また、プラットフォームやEC企業がオリジナルコンテンツを制作するのも一般的になりました。 【画像】6月14日、東京で声を上げた3500人の主張とは? 「子どもたちにフェアな未来を…」 情報が読者に届くまでの流れの中、どこに編集者がいて、どんな仕事をしているのでしょうか。withnewsではYahoo!ニュース・ノオトとの合同企画『WEB編集者の教科書』作成プロジェクトをスタート。第6回は「写真を編集する」プロである「フォトエディター」という仕事の役割と意義を、ハフポストの坪池順さんに説明してもらいました。(朝日新聞デジタル・朽木誠一郎) ◆坪池順さんが考える「フォトエディターの役割」 ・記事の写真選定。ときには企画案段階から必要な写真を想定してドラフト作成に関与。 ・文章と写真が相互に高め合うように写真を「編集」する。 ・使用する写真が他者の権利や尊厳を侵害していないかチェックする。

「写真は後から入れます」のもったいなさ

メディアに関わる人でも、「フォトエディター」という職業名は聞き慣れないかもしれません。フォトエディターとは読んで字のごとく「写真の編集を仕事にする」編集者。しかし、その役割はレタッチのような画像加工など、イメージしやすいものばかりではないと言います。 「文章の編集者と、することは同じだと思います。記事の出稿前、あるいは企画段階で相談をいただければ、『この記事にはどんな写真が必要か』を検討します。『この写真はGetty ImagesやReutersなど契約をしている通信社にある』『この取材には独自の視点があるから自分たちで撮影にいきましょう』と。撮影をする場合は、文章の編集者がライターをアサインするように、フォトエディターが把握している外部のフォトグラファーの特性に基づき、媒体のビジョンや記事のトンマナに合わせてアサインします」 「記事の内容や予算、締切などの条件に応じて、この記事を最高の形で出すにはどんな写真があればいいのか」を考えるのがフォトエディター、と坪池さん。海外メディアでは一般的な仕事ですが、日本ではあまり知られていません。坪池さんとの議論の中では、新聞社だと『写真部のデスク』、雑誌社なら『誌面レイアウトをデザインする編集者』が近い、ということになりました。 もちろん「撮影後のレタッチ」といった業務もないわけではありません。しかしそれは、文章でたとえるなら記事を作成した後で言葉のまちがいや事実誤認を修正する校正・校閲のようなもの。それ以前に、記事作成の上流工程において、写真という記事の要素に対して編集を加えるのがフォトエディターであると言えます。 一方、ウェブのライターや編集者は「写真で埋める」という発想を持ちがちです。「ウェブでは長い記事は読まれない(離脱されてしまう)」ということが定説になる中で、「読者を飽きさせないためにたくさん写真を使おう」が転じて「とにかく写真を入れなくては」になってしまう、というのは、ウェブの記事を制作したことがあれば、思い当たるのではないでしょうか。結果、ウェブメディアには「挿絵としての意図しかない写真」が溢れてしまう、と坪池さん。 離脱防止という写真の効果はたしかにあるとし、また、「書いては出す」サイクルを速く回さなければいけないウェブメディアの事情も理解しながら、坪池さんは「でも、記事を書く前に相談に乗るフォトエディターがいれば、避けられること」だと指摘します。 「『写真を撮影する』という行為は取材であり、『どのような写真を使用するのか』はライティングと同様、筆者のメッセージが強く込められるポイントです。文脈に沿った写真の選定もフォトエディターにとって大事な仕事ですが、現場でよくあるのは、記事を書いた後で『写真は後から入れます』『先にテキストを見てください』と編集者に依頼するコミュニケーションではないでしょうか。写真ではもしかしたら文章では伝えられないことが伝えられるかもしれないのに、もったいないと感じます」 坪池さんはウェブの記事を読むときに、「一旦テキストは読まずに記事の上から下まで写真だけを見る」ことがあるそうです。そうすると「『写真だけでも筆者の訴えたいことが伝わる記事』と、『ただ同じ人がポーズや画角を変えて写り続けている記事』『やたらとイメージ写真ばかりが並べられている記事』に分かれる」(坪池さん)とのこと。テキスト中心に思考してしまうメディア関係者には、身につまされる話です。

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