段階的な利上げが適当、緩和環境を維持し極めて緩慢に-安達日銀委員
安達委員の発言を受けて、東京外国為替市場の円相場は午前に一時前日比0.2%高の1ドル=148円88銭まで円高に振れた。その後は149円台前半で推移している。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、市場は「政策正常化プロセスに入る条件は既に満たしている」とのヘッドラインに反応したようだが、発言の詳細を見ると利上げに慎重な姿勢がうかがえると指摘。早ければ12月利上げの可能性はあるが、日銀の金融政策よりも、短期的には米国の経済指標や政治、中国の株式市場など海外要因にドル・円は左右されるだろうと語った。
米利下げ
午後の記者会見では、追加利上げを急ぎ過ぎて再びデフレに戻ることを最も避けるべきリスクとし、「慎重にやっていくべきだ」と改めて表明。その上で、金融政策判断に重要な2025年春闘の賃上げは「少なくとも今年並みが欲しい」との期待を示した。第1回回答集計が一つの大きなメルクマールになるとしつつ、来年1月の日銀支店長会議における各地の賃上げの感触も「判断材料になるかもしれない」と語った。
米国の利下げに伴う円安修正と金融政策への影響に関しては、消費者物価の上昇圧力が円安に伴う輸入物価や財価格から、サービス価格を中心とした基調的な物価に交代しつつあると指摘。米国の金融政策の影響を考慮する度合いは小さくなっているとし、日本の利上げは「アメリカの利下げが急ピッチだからできないという話では必ずしもない」と述べた。
他の発言
--取材協力:酒井大輔、日高正裕、グラス美亜、横山恵利香、氏兼敬子.
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Sumio Ito, Toru Fujioka