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戦後75年:今でも一本一本の指が覚えている、ソ連衛生兵だった彼女の「決して許せない」記憶

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ナショナル ジオグラフィック日本版

 第2次世界大戦の終結からまもなく75年。ナショナル ジオグラフィックは戦勝国、敗戦国双方の21人の証言「Last Voices」を集めた。ここではソ連軍に従軍した女性マリア・ロフリナの記憶を紹介する。 ギャラリー:終結から75年 大戦の記憶をつなぐ 写真37点  95歳になったマリア・ロフリナの手には、指の一本一本に今もその記憶がしみついている。ウクライナ生まれの彼女が16歳になる頃には、ナチスは祖国の奥深くまで進撃していた。「教室から出て、そのまま戦争に行ったようなものよ」。衛生兵になり、ソ連軍に4年間従軍した。  負傷兵をボートに乗せ、ドニエプル川を渡ろうとしているときに、オールが折れたことがあった。やむなく凍えるような水に手を浸し、必死でかいた。今でも指の痛みは耐えがたく、関節の一つひとつに鎮痛剤を注射している。  1942年には、ドイツ軍に包囲されたスターリングラードに閉じ込められた。攻防戦は半年余り続き、建物は破壊され、多数の市民が命を落とした。冬の気温は氷点下20℃を下回ることも珍しくない。ロフリナはソ連兵たちとともにトラクター工場にこもっていた。「体を寄せ合って温め合うしかなかった。私たちは誓ったわ。スターリングラードを決して忘れない、体を寄せ合った仲間のことを決して忘れない、と」  ロフリナが忘れたくても、忘れられないことがある。死にゆく兵士の飛び出した腸を体内に収めようとしたときに感じた生温かさ、ドイツ兵たちにレイプされた末に殺された同僚の衛生兵のこと。「彼らがしたこと、自分が見たことを決して許すことはできない」  ただ、戦場で彼女に一目ぼれし、戦争を生き延びたら、必ず君にプロポーズすると約束してくれたソ連兵がいた。二人は戦後に結ばれ、48年間連れ添った。 ※ナショナル ジオグラフィック日本版6月号「終結から75 年 大戦の記憶をつなぐ」では、第2次世界大戦の終結からまもなく75年、米国、ヨーロッパ、ロシア、そして日本で、存命の数少ない戦争体験者から貴重な証言を聞きました。

文=イブ・コナント

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