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〝報道被害〟癒えぬ傷 100%は消せないデマ 警察重視、特オチ…残る事件取材の問題点 桶川ストーカー殺人20年(下)

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 「デマを100%消すことはできません。私たちは死ぬまで背負わなきゃいけないんです」。20年前の桶川ストーカー殺人事件で犠牲になった猪野詩織さん=当時(21)=の母、京子さん(69)は訴える。今も自宅前にはやじ馬とみられる車が止まり、講演会などで詩織さんに悪い印象を持ったままの人に出会うという。事件は激しい取材攻勢と扇情的な報道をしたマスコミに課題を突きつけた。(共同通信=沢田和樹)  ▽「警察が言っている」  当時、なじみの薄かったストーカー犯罪という背景もあり、マスコミの取材、報道は過熱した。約3カ月間、自宅前に報道陣が張り付き、遺族は人の波をかき分けて家を出入りした。詩織さんのひつぎを載せて葬儀場へ向かう際、報道陣がカーチェイスのように追い掛けてきた。京子さんに「マスコミがストーカーになった」と言わしめる取材だった。  埼玉県警上尾署の記者会見では、事件の概要に加え、詩織さんの時計やバッグのメーカーまで明らかにされた。元交際相手が風俗店関係者だという情報もあいまって、一部メディアは詩織さんについて「ブランド依存症」「風俗嬢」と臆測を書き立てた。

 近所には「火のないところに煙は立たない」と言う人もいた。自宅を訪れた役所の職員が、事件現場に手向けられた花を「片付けろ」と言いに来たこともある。遺族は自分たちと接する人々の態度が露骨に変わるのを感じていた。  憲一さんが衝撃を受けたのは、全国紙の虚報だった。「実行犯が逮捕されると、遺族は菓子折りを持って上尾署にお礼に訪れた」。捜査を怠った警察に謝礼などあり得ない。憲一さんが新聞社に抗議すると「警察が言っている」と反論された。家族に確かめれば分かることだが、記者が押し寄せるメディアスクラムの状況で遺族が対応するのは困難だった。  後日、新聞に訂正記事が載った。「娘のことを面白おかしく書くのも許せないが、なかったことをあったと書くのはそれ以上にあり得ない。新聞が世に流れるデマを支えてしまった。最低だ」。今も怒りはくすぶる。  ▽記者、深く考えて  「警察などの当局は都合の良い情報しか言わない。警察取材に頼る危険性を示した事件だ」

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