固定資産税の「評価方式」見直しを東京都が検討 その背景は?
高層ビル増え従来方式ではさらに長期化の懸念
家屋の評価方法は「再建築価格方式」と呼ばれ、日本では1963年に導入されました。以降、ずっと同じシステムで採用されています。 しかし、そうした再建築価格方式では家屋の評価額を算出するのに時間がかりすぎるとして、東京都は評価方式の見直しをするべく4月に検討会を立ち上げました。 「東京都が評価方法の見直しを進める背景には、都心部において超高層ビルが相次いで建設されているからです。高層ビルなどでは資材点数も多いですし、高級マンションやホテルでは特別仕様のモノを使うなど判断に困るケースもあります。そうなると、固定資産税の決定までに、さらに時間を要することになります。これらをスピードアップさせるためにも、新しい評価方式の必要性が出てきたのです」(同) 東京都が検討している新しい評価方式は、大型の家屋だけを対象にして、それよりも小さな家屋は従来通りの評価方法で算定するとのことですが、「大型の家屋の定義は、これから検討会で話し合われるので、まだ決まっていません」(同)といいます。
評価額算出が遅れると都市開発にもブレーキ
諸外国では固定資産税の評価方法に別の方式が採用されており、迅速化が図られているのです。また、日本では固定資産税に連動して、都市計画税・登録免許税・不動産取得税・相続税・贈与税などが決まります。家屋の評価額の算定が遅れれば、固定資産税だけではなく、あらゆる税額に影響が及ぶのです。 さらに、税額が決まらないと不動産の購入者も二の足を踏んでしまいます。そうなると、都市開発にブレーキがかかることが懸念されます。 近年、REITと呼ばれる不動産投資が注目を浴びていますが、東京はオリンピックを目前に控えて都市開発を加速させようとしています。都市開発を加速させるには、不動産投資の活発化が欠かせません。ゆえに、迅速化が求められているのです。 とはいえ、現行の固定資産税は法律によって全国一律に定められています。東京都が立ち上げた検討会に総務省職員もオブザーバー参加していますが、東京都の意向だけで全国一律の固定資産税のシステム変更することはできません。あくまで、東京都は検討した内容を総務省に提言するところまでしかできません。 東京都主導で検討が始まった固定資産税の評価方式の変更、迅速化が世界的な潮流になっている中、どのような結論が導かれるのでしょうか? (小川裕夫=フリーランスライター)