美術館からクラブまで。レーザービームと蛍光テープで世界を繋ぐアーティストデュオ・MES
レーザービームで空間のなかにさまざまな造形をかたちづくるアーティストデュオ・MESのお二人。蛍光テープを使ってライブペインティングのように描く“ライブテーピング”なる表現方法を駆使し、観る人と作品とが溶け合う有機的な空間を生み出している。分断する世界を、レーザービームやテープで繋ぎ留めようと試みる、二人の思考に触れる。
重力への疑念から生まれた、レーザービーム
―お二人は東京藝術大学で出会ったわけですよね。 KANAE はい。そのときTAKERUは重力に負けているような、だらしない彫刻を作っていて(笑)。それが驚くほどかっこよくて、最高だなって思ったんです。すごく新しいものを観た感覚になって。 TAKERU 彫刻は重力に対して360度パーフェクトに立っていないといけないものだとずっと思っていたんです。 でもあらためて考えると、僕自身できることならずっと寝ていたいし、重力に対してだらしない人間だよなと。シャキッとしたものより、ずっと溶け続けるもののほうが素直に共感できるというか。自分の感覚と彫刻の概念をすり合わせていったら、自然とそういう作品が出来上がっていったんです。 ―そんなTAKERUさんの作品を見てグッときたと。そのときKANAEさんはどんな作品を作ってらっしゃったんですか? KANAE 私は演劇をやっていたんですよ。 ―藝大在学中に? KANAE はい。私はずっと言葉を扱う人になりたくて、弁護士や文芸批評家になることを考えていたんです。でも、高校の国語の先生に草間彌生とか寺山修司のことを教えてもらって、ここにも言葉を扱う人がいるんだ!と気がついて。 それで藝大を受験して、芸術学部という美術館の学芸員とか研究者を目指す学部に入ったんですね。そこでは仏像の(装具の)研究者や絵画の修復家を目指す同級生が多かったんですが、段々と「もっと“今”に関わることをやりたい!」と思うようになって。技法を色々習うけど、演劇と音楽と映像だけ欠けているなと思って、お芝居を観に行くように。 ―なるほど。 KANAE 観ているうちに私も参加したいと思いはじめて、最初は“ドラマトゥルク”という演劇業界におけるキュレーター的な役割で手伝っていたんですけど、気づいたら舞台の上にいて(笑)。 そのとき、ひとつの舞台をつくるのに、何人もの役者やスタッフが純粋無垢に懸けているのが素晴らしいなと思ったんです。 それに比べて美術の世界は作者が孤立している気がして、もっと個人の輪郭って、環境とか他者に影響されていいんじゃない?って。演劇を2~3年やって美術に戻ったときに、一人に留まらない制作ができないかなと思ってグループショーをはじめたんです。