TVアニメ『アオアシ』声優・武内駿輔が語る“明確な悪”の演じ方「ただの気性が荒いクズな人間ではない」
歌手と声優には通ずるところがある
──武内さん自身「精神的な部分」の重要性に気づかされた瞬間が、過去にあったのでしょうか? 自分の出演作を見聞きするなかで、というのもありますが、歌が最もわかりやすいですね。歌は、芝居と違って音程やリズムが決まっていて、全く同じになりそうなものですが、人によって「悲しげに聞こえる」「熱量が高く思える」ということが起きる。そういうところに起きている変化を聴き比べるためにも、歌は良い題材です。 他業種の方を参考にすることはありますね。たとえば、今の自分とは全く違う感情を引っ張ってきて、それを言葉に乗せてアウトプットするという意味では、歌手と声優には通ずるところがある。素晴らしい表現力を持つ歌手の方もたくさんいらっしゃいます。 あとは、その感性に気づけたら、トレーニングを積むだけです。もちろんセンスに依る面もありますが、プロの現場でミキサーさんに意見をうかがって、良いと言われたテイクから情報を収集したり、周囲から教えてもらったりすることで、自分の耳も鍛えられていきます。他の人からの気づきがあれば、自分にも取り入れて試してみることもします。 一般の方からすれば、聞き比べてもわからないほどの変化かもしれません。でも、確かに音が違うものになっていく。その違いをわかるようになるために、自分でも努力していくことは心がけていますね。
阿久津は演じ方の「正解」を決めるのが大変なキャラクター
──武内さんは公式サイトで「キャラクターが持つパワーに負けぬよう」とコメントされていましたが、実際の収録で負けないように声色や口調など意識した点はありますか? パワーの強さでいうと、阿久津は演じる側としては「正解が多い」キャラクターなのだと思います。これが、アシトなら「少年っぽい声」だけれど「女性寄りではない」といった道筋が見えやすいのですが、阿久津は僕よりも声が高い人が演じても、ハマりそうな気がして。 先行して公開されたPVなどから視聴者の方の反応を見ていても、阿久津に対して「もっと高い声を想像していた」「いや、このくらいの低さが良い」といったように、評価が分かれる。見る人によって正解が変わるキャラクターは、いろいろな可能性を秘めている、ある種の強いパワーを持っていると僕は思うんです。 そういったキャラクターの正解を自分が決めるのは、やはりすごく大変。そこは今もトライアンドエラーですね。心情の変化もそうですし、どういった音圧で迫るかもそう。当たって砕けるチャレンジを続けています。阿久津を演じてはいますけれど、気持ちとしてはアシトみたいにがむしゃらです(笑)。 ──そういう意味で阿久津というキャラクターは、武内さんにとって大きな存在になりそうですね。 「どういうふうに演じようか」と考えさせてくれるキャラクターに出会えるのは、なかなか得られない機会です。自分と対話して、相談して、それを現場へ持っていくという時間を、阿久津は与えてくれています。 近年、たくさんの素敵な役をいただいてきましたけれど、その中でもありがたいと思える役の一つですね。僕も、阿久津と一緒に成長していけたらな、と思います。 (c)小林有吾・小学館/「アオアシ」製作委員会
KAI-YOU.net編集部