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人気ミュージカル『ハミルトン』Disney+で世界同時配信 脚本リン・マニュエル・ミランダが単独インタビューで語った「差別、演劇、コロナ」

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「米国建国の父」の一人、初代財務長官アレキサンダー・ハミルトン(1804没)の波乱に満ちた生涯を、ヒップホップに乗せて生き生きと描いたブロードウェーミュージカル『ハミルトン』。実在する白人の役に黒人などマイノリティー俳優を起用した異色作は、2015年の初演以来、大ヒットを続けている。 脚本と作曲作詞を手がけ、初演時の主役も演じたリン・マニュエル・ミランダ氏(40)が6月中旬、朝日新聞の単独インタビューに応じた。人種差別への抗議運動が盛り上がる米社会への思いや、新型コロナウイルス禍で劇場公演が中断した現在の心境を語った。(聞き手・構成・渡辺志帆) 【写真】ミュージカル『ハミルトン』から

――新型コロナウイルスの影響で世界が動きを止めました。この3カ月どう過ごしていましたか。 パンデミックですべてが休止したのは、初監督の映画を撮り始めて10日目のことでした。米劇作家の故ジョナサン・ラーソンのミュージカル『Tick,Tick…Boom!』を映画化しているところだったんです。最初の1カ月は、私たちの多くが思い描いていた一年の計画を忘れて、新しい現実に順応しようとしていたと思います。妻と2人の息子がいるので、遠隔授業や外出時のルールに順応したり、感染しやすい義理の両親を守ったりしていました。 そんな中で、制度的人種差別に対する抗議運動が起きました。この瞬間、みんな家で過ごしながら、このリセット期間にどんな問題を解決できるか思いを巡らせていると思います。私も同じです。新しい作品を作ろうとしてはいますが、(抗議活動にまつわる)報道が気になってしまうときもあります。 ■リン・マニュエル・ミランダ 1980年、米ニューヨーク州生まれ。2008年、米マンハッタン北部のヒスパニック系移民の若者を描いたブロードウェーミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の作詞作曲を手がけてトニー賞を4部門受賞。映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)やディズニーアニメ「モアナと伝説の海」(16年)の楽曲に参加。俳優として「メリー・ポピンズ リターンズ」(18年)などに出演。「ハミルトン」は、主演した16年撮影のオリジナルキャスト版の舞台が、7月3日からウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」で世界同時配信される。21年秋の公開予定を急きょ早めたため日本語字幕の制作が間に合わず、当面は英語音声のみの配信。日本語字幕版は配信が決まり次第、「ディズニー+」公式サイトなどで周知される。 ――「ハミルトン」では、「米国建国の父」である白人たちの役に、あえて白人ではない人種の俳優を起用しました。その意図を教えてください。 ミュージカルを作ろうとした当初からのアイデアでした。原作のハミルトンの伝記を読んだとき、二つのことにぴんときました。 一つは、複数いる建国の父たちの中でも、アレキサンダー・ハミルトンだけが移民の物語と呼べる背景を持っていたという事実です。ハミルトンはカリブ海の島出身で米本土で育ったわけではありません。貧困の中から、優れた知性と文才で出世しました。もう一つは、彼が貧困から抜けだす過程、英国との独立戦争に身を投じる過程、そして新政府作りを支援した過程を書き残したことです。 私から見れば、それはヒップホップ物語そのものに思えました。なぜなら、私の好きなヒップホップアーティストは、自分の生き様や苦闘を具体的に書き、同じ経験を持たない世界中の人にも共感を呼び起こすことができるからです。たとえば「ビギー」(1997年に早世した米国の伝説的ラッパー「ノトーリアス・B.I.G.」)は自らの人生を非常に具体的かつ見事に歌詞にしたので、私たちは歳月を経た今でも、彼の歌詞を互いに引き合いに出すことができます。私にしてみると、ハミルトンはビギーに結びつく存在だったのです。 だから、一番最初にハミルトンの伝記を読んだ時ですら、頭の中に描いた「建国の父」は白人ではありませんでした。どのヒップホップアーティストがハミルトンの熱量を表現できるか、どのR&Bアーティストが初代大統領ワシントンの熱量を表現できるかを考えていたのです。頭の中で『ジーザス・クライスト・スーパースター』(イエス・キリストの最後の7日間を描いたロックミュージカル)を想像し、有色人種による配役をしていました。彼らこそ、ヒップホップやR&Bを生み出した人々だからです。このアイデアは最初からずっと持ち続けていました。「建国の父」たちがみな白人の設定は、私にはまったく考えられなかったのです。