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【論説】中国建国70周年、その歴史は誰のものか

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The Guardian

【ガーディアン論説委員】  中国が10月1日に行った建国70周年の国慶節(建国記念日)を祝う記念式典は、歴史的な祝賀というより、政治的なイベントだった。中国共産党は1949年に政権を掌握して以来、歴史の力を理解し、建国当時は、新生中国がより良い国家になるよう、国民に「苦い過去を思い出す」よう促した。  習近平国家主席は、初代の毛沢東以来、他のどの指導者よりも歴史の重要性を理解している。国家主席に就任後間もなく、党員に対し、欧米の民主主義と同じくらい「歴史虚無主義」は中国共産党の統治を脅かす問題だと警告した。  国民の多くに統治をありがたがられている中国共産党は、民主的に選出された他国の多くの政権がうらやむような支持を獲得している。しかもそれは、党が展開する大掛かりなプロパガンダや検閲の影響だけではなく、国家全体でみると、この70年で寿命、識字能力、収入において大幅に前進し、数億人が貧困から抜け出した。  しかし人々は、貧困から救い出されたわけではない。自らが努力して抜け出したのだ。党は、強制結婚という家庭単位での抑圧的な制度を禁止した代わりに、一人っ子政策という抑圧的な制度を公的に導入し、今なお、出生の管理を行っている。こうした前進は、悲惨かつ無用な代償を伴った。当時の毛国家主席の大躍進政策によって引き起こされた飢饉(ききん)では数千万人が犠牲となり、文化革命ではさらに数千万人が弾圧された。  最も深刻な被害を受けた人たちの中にも、建国70周年を祝う理由を見出した人はいた。しかし多くの国民は、怒るか、冷笑するか、絶望している。一党独裁国家の残酷さは広範囲に及び、容赦ない。新疆ウイグル自治区では、中国政府が婉曲的に職業訓練施設と呼ぶ収容施設に推定150万人のイスラム教徒が拘束され、北京では、中国の法律を行使して基本的人権を擁護しようとした男性の6歳の息子が学校から締め出されている。  中国が自国の威光を推進する姿勢には、驚くほどの非情さがある。軍事パレードを見ることができたのは招待者のみ。近隣の住民は、カーテンを閉めておくよう指示され、1989年の民主化運動における過酷な弾圧で子どもを亡くした高齢の「天安門の母」たちの自宅には警官が配備された。  天安門事件での虐殺以来、中国共産党は「愛国教育」と歴史の構築を強化してきた。そこでの党の中心的な役割は、階級闘争ではなく、「国辱」を終わらせることだ。華々しい経済成長の代償(家庭崩壊、常軌を逸した政治的腐敗、格差、環境破壊)に続くように経済が減速し、米国との摩擦が激化する中で、国辱を晴らすという語り口はますます重要になっている。  一方で香港では、一党独裁制が全員から感謝されているわけではないことを多くの市民が示している。香港で約4か月間にわたって続いている抗議活動とそれに対する反応は、来年1月の台湾総統選に向けて現職の蔡英文総統の支持を押し上げ、中国政府を失望させている。  こうした状況の中、中国共産党は歴史的なメッセージをこれまで以上に熱心に発信している。過去のメッセージとは内容的に大きく異なるものの、過去は明確に反映されている。「人民の指導者」は、抑圧の高まりやイデオロギーの復興に目を光らせつつ、「闘争」という言葉を多用するようになっている。  中国は改めて、国際的秩序を再構築しようとしている。習主席が早くも見据えているのは、中国の100周年、つまり30年後だ。それまでにまた、この国では新たな物語が語られるのだろうか。【翻訳編集】AFPBB News 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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