郵便料金“30年ぶり”値上げ、なぜ? 年賀状は「10年で3分の1」発行枚数“激減”で「新商品」も
民間企業との「競争」から「協業」へ
明治初頭の開始以来、郵便物を扱う公益性の高さから国営で行われてきた郵便事業だが、小泉純一郎首相(当時)が進めた郵政改革によって2005年10月、郵政民営化法が成立。日本郵政公社は解散し、12年10月からは日本郵政グループとして、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4社体制となった。 郵便の業務についても長く国が独占してきたが、2003年4月に公布された信書便法(民間事業者による信書の送達に関する法律)によって、手紙やはがきなどの「信書」は、総務大臣の許可を受けた信書便事業者に限って、その送達が認められている。今年6月現在、許可を得ているのは全国612の民間企業だ。 民営化等によって民間企業との競争を余儀なくされた日本郵政グループだが、昨今では「協業」も目立つ。 同グループは5月の会見で、各社の中期経営計画として「JPビジョン2025+(プラス)」も発表。 物流大手のヤマト運輸、西濃グループとの協業によって、荷量を増やし、また幹線輸送の共同運行によって、2024年問題(働き方改革によってドライバーの労働時間に上限が課されることに伴い、輸送能力が低下すること)や、持続可能性(CO2の排出削減)にも取り組んでいく意向を示した。 発表に際し、増田社長は、「新しいサービスやいろいろな商品をもっと、他企業様などとも協力しながら出せるのではないか、と思っています」と語った。
苦戦が強いられる年賀状では新たな商品も
11月1日からは、年賀状の販売が始まった。 年賀状の発行枚数も年々減少し、10年前(2015年)の約33億枚から、2025年は約11億枚(当初発行)と3分の1となり、苦戦を強いられている。 こうした苦境について、日本郵便広報部は「インターネット社会の中でも、一定程度、郵便事業の必要性は求められるものと認識しており、デジタル社会が進展する中での顧客ニーズの変化を踏まえ、商品・サービスを改善していくことにより、便利にご利用いただけるよう継続的に検討していきます」と回答。 今年は年賀状とギフトが一体となった新商品「POST&GIFT」を発売した。差出人は、年賀状と料金が一体となったはがき(料金別に3種類)を購入して送る。受取人ははがきのQRコードを読み込んでネット上からギフトを申し込み、受け取るというものだ。 筆者の知人にも「年賀状はもう送らない」と連絡してきた人や、LINEの“スタンプ”で年始の挨拶を送ってくる人が少なくない。ただ、実物、特に手書きの年賀状には、デジタルのコミュニケーションにはないあたたかさがあることは多くの人が体感的に理解しているのではないだろうか。 ■榎園哲哉 1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
榎園哲哉