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ペラっとA4の紙1枚…拍子抜けだった宗教法人の認証を示す紙【牛次郎 流れ流され80年】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【牛次郎 流れ流され80年】#42 「願行寺」が建立された1989(平成元)年は、オウム真理教が東京都から宗教法人の認証を得た年でもある。同年に教団は坂本堤弁護士一家を殺害。ここからさらに暴走、凶暴化し、1995年3月に地下鉄サリン事件を引き起こしている。  この未曽有の凶悪事件によって宗教法人に対する風当たりは強くなった。1996年には宗教法人法も改正され、役員名簿や財産目録の提出も義務付けられるようになっている。  ただし、その前から宗教法人への規制は厳しく、新規に認められるのは並大抵のことではなかった。願行寺も認証が下りるまで5年もかかっている。 「俺は自分で役所が肌に合わないことが分かっていたから、これは半端じゃできないぞって腹をくくったんだ。もしもダメだったら、役所の前で死んでやるってぐらいの覚悟でね。人間って、中途半端だとキレるんだよ。絶対にやっちゃるって本気になるとキレようがない。これでもか、まだやるのかってぐらい、はね返されても食い下がった。言うことを素直に聞いて、へこたれずにやるしかなかったよ」  そのかいあって書類は受理された。だが、そこからも簡単には進まなかった。 「さんざっぱら通わせておいて、やっと書類は受け付けてくれたんだけど、もちろんそれだけではダメ。そこまでやるならってことで、ようやくここまで見に来ることになったんだよ、建物や本堂をね。最後は役人が2人、目黒の願行寺に来て、住職のおばあちゃんと俺の意思確認をした、要するに首実検だな。それでようやく認証が下りたんだ。まあ、俺の場合は地下鉄サリン事件の前だったから取れたけど、今じゃあ絶対に無理だろうな。本山を持たない単立の宗教法人の認証なんて下りるわけがないよ」  諦めずに辛抱強く取り組んだ結果、高い壁を越えられた。岩盤を突き破ったのだ。 ■A4がペラっと一枚 「この寺を建てた時は、俺が使う庵でいいかって思ってたんだよ。宗教法人の申請なんて、そこまで本気で考えてなかった。でも、住職をやっていたおばあちゃんに会ってから、意地になったんだ。まあ役人も意地になって潰そうとしたんだろうけどな。ただね、認証の紙ってのが拍子抜けで、普通のどうってことのないA4の紙をペラッて1枚、渡されるだけだからね。文部大臣の署名とハンコはあったけどさ。『あのね、せめて表彰状みたいなのをくれよ~』って言いたくなったよ、ホント。こんなにがんばってやっとここまで来たのに、これだけかよって」  もっとも、この一件は役所内で語り草になっているのかもしれない。 「今でも文化庁に用があって『すみません、願行寺です』って電話すると、『あっ、牛込先生ですか』って言われるからね。担当者が代わっても、俺の名前を知ってんだよな。えっ? なんで? って驚くよ」  寺として檀家を持ち、墓を建てられるようになるまでは、さらに3年かかった。=つづく (取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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