ロッテ福浦2000本秘話。イチローの言葉と現役続行宣言の縁
2018年のプロ野球では、多くの記録が生まれた。2000本安打を達成したのが、ソフトバンクの内川聖一(36)と千葉ロッテの福浦和也(43)の2人。現役続行を決め、来季、球界最年長プレーヤーとなる福浦にプロ25年目にして辿りついた2000本安打の秘話と、来季へかける思いを独占インタビューで聞いた。上下2回に分けて紹介する。 「完売御礼」――。 ペナントレースに見放された千葉ロッテのチケット売り場に早々と張り紙がされた。9月22日、ZOZOマリン。福浦の2000本安打の大記録にリーチがかかっていた。 「体は、もうぎりぎりでした。疲労感はあった。1本だけを残して同級生の松井稼頭央のいる西武戦だったの、その前で打ちたいという気持ちが強かった。引退する岡田、根元、金沢、それに荻原やトレーナーの先生方もわざわざ見にきてくれていましたから。早く打ちたかったけれど…最終打席になったんです」 この試合で達成できなければチームは仙台、大阪へ遠征に出る。 「ぜひとも千葉で決めてくれよ!」。そう声をかけてくれた井口資仁監督は、地元千葉マリンでの連戦に福浦をずっと先発起用していた。 だが、1、2打席と凡退。3打席目は四球……。そして8回、先頭打者として福浦の4打席目。延長の可能性もなくはなかったが、おそらく、これが最後の打席である。左腕、小川龍也のカウント2-2からの甘いスライダーだった。熟練のバットコントロール。乾いた音を残して打球はライト線を抜ける。 二塁へ滑り込んだ福浦は珍しくガッツポーズをした。 ――何かが降りてきましたか? 「いえいえ。それはなかったんです。気力だけ。多くのファンが集まってくれて、みんなが打たせてくれたヒットです。準備はいつもと一緒。冷静でした」 ロッカーでは、いつも体重計に乗るが、この連戦で89キロあった体重が87キロまで減っていた。 スタンドではファンが涙していた。 12球団で最も美しい応援歌。彼らは福浦が打席に向かうと「俺たちの福浦」と歌う。2011年から始まった応援歌だ。 「初めて打席で聞いたときはビックリしました。でも打席に入るとピッチャーに集中するので深々と歌詞を聞いたことはなかったのです。後で周りから教えてもらって知りました」 昔は事前に「今年は、こういう応援歌になります」と、教えられていたこともあったが、この時は、なんの前触れもなく新しい応援歌を打席で聞かされたという。 「責任やプレッシャーじゃなく力に変わりました」 43歳の福浦には18連敗の記憶がある。 1998年の6月13日のオリックス戦から7月8日のオリックス戦までおよそ1か月も勝てなかったプロ野球ワースト記録。福浦は、近藤昭仁監督率いるロッテ打線の不動の3番打者だった。 「あのときも負けてマリンを出るときにも罵声はなく頑張れの声しか聞こえなかった。負けてお客さんが増えていったんです。自分にとって悔しいだけでしたがずっとファンに支えてもらっている」 だから福浦は2000本を「みんなが打たせてくれた」と言った。