<高校野球>「かっこいい姿見せたかった」 幼児向け体験会に取り組む島根・平田 センバツ中止
21世紀枠に選ばれ、春夏通じて初の甲子園切符をつかんだ平田(島根)。近年の戦績に加え、野球人口拡大のための幼児向け野球体験会の取り組みが認められ、地元の応援ムードは高まる一方だった。感染防止のため時間を短縮して練習を続け、11日も打撃に汗を流した。午後6時ごろ、植田悟監督(48)が練習を切り上げさせ、選手らを整列させて大会中止を伝えた。硬い表情でじっと見つめる選手らに、植田監督が「夏は島根大会で優勝して必ず甲子園の土を踏もう」と告げると「ハイッ」と大きな声が上がった。 【写真特集】センバツ中止決定に涙を見せる球児たち 保科陽太(ひなた)主将(2年)は「残念だが感染症のことなので仕方がない。今は切り替えて、夏に甲子園に出たい」と淡々と話した。坂田大輝外野手(2年)は「(野球体験会で教えた)子どもたちにかっこいい姿を見せたかったので悔しい」と唇をかみしめた。植田監督は中止に理解を示しつつ「選手たちにどんな言葉をかけていくか、ちょっと今は分かりません」と漏らした。 21世紀枠で46年ぶり3回目の出場を決めていた磐城(いわき)の木村保監督(49)は福島県いわき市内の同校で取材に応じ、「残念という言葉が最初に出る。ただ、社会情勢を考えたらしょうがないですよね」と冷静に受け止めた。東日本大震災発生から9年という日に中止が決まり、「この日なのか、という思いはあった」と話した。 木村監督によると、岩間涼星(りょうせい)主将(2年)は中止が決まる前から「この期間が夏につながる」と力強く話していたといい、「ジーンとくるものがあった」(木村監督)。「選手らには『中止は誰も悪くない。代表に選ばれたのは確かなことだ』と伝えたい」と語った。 新型コロナウイルスで100人を超える多数の感染者が確認されている北海道。21世紀枠で初のセンバツ出場を決めていた帯広農(北海道)は2日から休校で自宅学習となり、部活動も中止に。選手たちは検温や健康管理を徹底し、7日からは少人数による自主練習を始め、最終判断を待っていた。前田康晴監督(44)は「選手に甲子園の土を踏ませたかったが、このような状況なので決定を支持するだけ。21世紀枠に選ばれてから、いろいろな経験をさせていただき、プラスしかない」とコメントした。 昨年夏の甲子園を制し、今回のセンバツで夏春連覇を目指していた履正社(大阪)。岡田龍生監督(58)は「残念だ」とコメントした。 「テレビや新聞で(大型イベントなどの)10日間の自粛期間延長やプロ野球の開幕延期などを知り、この1週間は不安な気持ちで過ごしていたが、生徒たちは甲子園でプレーできることを信じて準備してきた」とし、「野球部の子どもたちのことを考えたらかわいそうだが、同様に中止になった他競技の部員も同じ。これだけ感染者も増え、政府の方針もあり、致し方ないのかなと思う」と受け止めた。その上で「生徒たちにとっては非常に残念だが、最後のチャンスである夏に向けて、一日一日を大事に練習していこうと呼びかけたい」と気持ちを切り替えていた。【鈴木周、岩壁峻、高橋由衣、隈元悠太】