「無策」と「信念」の狭間で…マンチェスター・ユナイテッドが土壇場で2位確保
前半、マンチェスター・ユナイテッドはクロスボールを多用した。その数は12本。これはオレ・グンナー・スールシャール監督になって以来最多のものだ。 【動画】マンチェスター・ユナイテッド対ウルブス戦ハイライト サイドを突破していたわけではなく、ウルブスの守備ブロックを崩せなかっただけだ。ブロックの外でボールを回し、外からクロスを入れるしかなかった。 なぜそんな試合展開になったのか? 今のユナイテッドはブルーノ・フェルナンデスのチームだ。この試合で12月は9試合目の出場となり、17日からはずっと中2日で5連戦だ。さすがにコンディションが悪く、しかもバイタルエリアを堅く守るウルブス相手には輝けなかった。そういう時は、ポール・ポグバが前に出てプレーすることが出来れば良いのだが、70分過ぎにミドルシュートを打つまでは大人しいプレーに終始していた。
ウルブスの守備は、リバプールを相手にしたWBAのものとは違い、カウンターを発動させるためのものだ。無理して食いつくのではなく、割り切って中央を固めた守備でボールを弾き返し、アダマ・トラオレが強烈なフィジカルとスピードでラグビー選手のように一気にボールを前に運ぶ。 ポグバが大人しかったのは、それが関係している。 外にボールを回すしかなくなったユナイテッドは左サイドバックのアレックス・テレスのクロスに頼らざるを得なくなったが、彼はトラオレと対面するポジションだ。そして、同サイドの前線にいるマーカス・ラッシュフォードは守備に戻らない。そうなると、テレスが上がっていくために、ネマニャ・マティッチがトラオレの担当に回ることになる。マティッチと2人でセンターを担当するポグバは、トラオレ以外の全スペース担当となり、むやみに攻撃に参加することはできなくなった。 結果、トラオレを封じられたウルブスと、攻め手がなくなったユナイテッドの我慢比べが続くことになった。
後半開始から、テレスに代わってルーク・ショーが投入された。前半と同じ展開であればテレスは必要だったが、スールシャール監督はマーカス・ラッシュフォードと合っていなかったことを問題視し、テレスを下げてまで背番号10をフィールドに残すことを選んだ。そうしてもラッシュフォードは目立たなかったが、ショーは単独でトラオレを止める場面も見せ、マティッチの負担が少なくなるとようやくポグバが攻撃に顔を出せるようになった。 それでも、ゴールの気配は無かった。強固なブロックを敷くウルブス相手に、フェルナンデスやラッシュフォードが良さを出せず、カバーニもどうすることもできなかった。引き分けが妥当な展開だった。 しかし、最後の最後でユナイテッドが勝利を手にした。フェルナンデスのロングボール1本でペナルティエリアまで侵入したラッシュフォードがシュートを放つと、相手ディフェンダーに当たってコースが変わったボールがゴールネットを揺らした。 満身創痍の王様フェルナンデスを代えなかったのはスールシャール監督で、周りと合っていなかったエースを代えずに心中することを選んだのもやはりスールシャール監督だ。 我慢比べで、信じた選手が勝利をもたらしてくれた。 勝てなさそうな試合で最後になぜか勝ってしまう。サー・アレックス・ファーガソン監督時代の強いユナイテッドが頭をよぎったファンも多かっただろう。リバプールを2ポイント差で追う2位として2021年を迎えることになったユナイテッド。勝ちきるチームに変貌しつつあるのは、監督と選手の信頼関係の証でもある。 ■試合結果 マンチェスター・ユナイテッド 1ー0 ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ ■得点 93分 マーカス・ラッシュフォード
サッカー批評編集部