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東京ヴェルディ・藤本寛也がポルトガル移籍!? 噂のクラブ幹部を直撃「我々は日本の市場を意識している」

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 また日本サッカーの将来を担う若手選手が欧州へ旅立つことになるのだろうか。去る22日、東京ヴェルディに所属する元U-20日本代表MF藤本寛也の、ポルトガル1部ジル・ヴィセンテへ移籍に関するニュースが流れた。果たしてこの一報に信憑性はあるのか。当事者でもあるジル・ヴィセンテで強化部門の責任者を務めるチアゴ・レーニョSD(スポーツディレクター)にオンラインで直撃取材を敢行した。(取材・文:舩木渉) 【写真で振り返る】発足して28年目のJリーグ。歴代MVPの功績を辿る

●藤本寛也がポルトガルに移籍!?  驚きのニュースが飛び込んできたのは5月22日のことだった。ポルトガルの大手スポーツ紙『ア・ボラ』に掲載された、ある記事にこう記されていた。 「藤本寛也を東京ヴェルディからジル・ヴィセンテに連れていくための話が非常に進んだ段階にある。20歳の日本人攻撃的MFは、バルセロス(ジル・ヴィセンテの本拠地)のクラブに買い取りオプションのある1年間のレンタルの準備をしている」  現在ポルトガル1部リーグで10位につけるジル・ヴィセンテが、J2の東京ヴェルディに所属する元U-20日本代表MF藤本寛也の獲得に動いているというのだ。いわゆる“飛ばし記事”なのかとも考えたが、与えられる紙面の広さや記事の数が限られる小規模クラブについて、大手の全国紙が国際的に無名な選手に関する根も葉もない噂を書くとは考えにくい。  ポルトガルでは各クラブと深い関係を築いた地元の記者がおり、ジル・ヴィセンテのような地方クラブにおいて余程のビッグネームでない限り“飛ばし記事”を書く意味はないだろう。もし大きな移籍話が動いているのであれば、もっとセンセーショナルに扱われるはずだ。  このニュースが世に出たタイミングで、ちょうどジル・ヴィセンテに所属する友人と連絡を取り合っていた。全く別の話題で他愛もない世間話をしていたところだったが、「このニュースについて何か知っている?」と問うてみた。  かつて横浜F・マリノスでプレーした経験を持つその選手は「いや、僕は強化部門の人間ではないから全く知らない。でも、記事が出てから僕のところにその選手について尋ねる連絡が結構来ているね。どんな選手なんだい?」と返してきた。そこでYouTubeにアップロードされている藤本のハイライト動画を見せたところ、彼はこう返してきた。 “Amazing player”  卓越した左足の技術とプレービジョンを持つ藤本を見て、「驚くべき選手」という印象を抱いたようだ。そして、『ア・ボラ』紙に掲載されたニュースに関する取材先としてジル・ヴィセンテでスポーツディレクターを務めるチアゴ・レーニョという人物を紹介してくれた。 ●ポルトガルで高まる日本人への信頼  2018年から現職でジル・ヴィセンテの強化部門の責任者として働くチアゴ・レーニョ氏は、オンラインでの取材を快諾してくれた。しかし、藤本の移籍に関して「そのニュースについて、現時点では私が話さない方がいいと思う」と言及を避けた。  とはいえ肯定も否定もしていない。「そんな話はない」と全否定するのではなく、「現時点で」「話さない方がいい」という言葉を深読みすれば、移籍交渉自体が進んでいるとも考えられる。もちろん正式オファーなどに至っておらず、移籍のプロセスが進んでいるわけではない可能性もあるが。  31歳と若く、2016年夏まで現役選手としてプレーしていた経験も持つレーニョ氏は、選手の立場でも強化部門の立場でも移籍の話題がデリケートなものだということを十分に理解している。そのため個別のトピックには言及しなかったが、一方で「ジル・ヴィセンテは日本の市場のことを意識している」と語った。 「ウーゴ・ヴィエイラ(元横浜F・マリノス、現ジル・ヴィセンテ)はいい情報を持っている。彼は日本のサッカーのことをよく知っているからね。そして、日本人選手たちがポルトガルで素晴らしい経験をしてきたことで、ポルトガルのクラブと日本人選手たちの間に信頼が育まれてきている」  ポルトガルで日本人選手が信頼されるようになってきた背景には、ポルティモネンセからカタール経由でポルトにステップアップしていった中島翔哉、現在ポルティモネンセで信頼を獲得している権田修一や安西幸輝、マリティモで主力に定着した前田大然といった現役日本代表選手たちの貢献も大きいだろう。かつてマリティモでプレーした相馬崇人、スポルティングCPでプレーした田中順也といった選手たちが残してきたものもある。 ●タレント発掘はジル・ヴィセンテの自慢  レーニョ氏も「私の日本人選手に対する印象は非常にいい」と語る。ただ、「新型コロナウイルス流行後の欧州のフットボール市場はいくつかの変化が予想される」中で、各クラブは補強にかけられる予算の削減を迫られ、少なくとも夏の移籍市場でリスクを冒すことも減るとジル・ヴィセンテの若手スポーツディレクターは予測している。 「日本人選手たちは非常に素晴らしい技術面のクオリティを備えているが、欧州の市場においてほとんど登用されていない。おそらく経済面であまり魅力的でないという側面もあるのだろうと思う。そして欧州の主要リーグは、この夏の移籍市場でJリーグから直接新しい選手を獲得するようなリスクを冒さないだろう。 日本人選手にとって最も理想的なルートは、欧州の『第2グループ』にあたるリーグのクラブに入っていくことだと思う。ポルトガルリーグがまさにそうだ。ただ、そのルートを辿るためには選手たちが自分のキャリアにおいて金銭面を度外視して、賭けに出なければならない。ポルトガルのような欧州の中堅リーグのクラブは日本と同じだけの給与を捻出することができないからね」  潤沢な予算のない中でいかにチームを強化するかという課題を常に抱える中で、ジル・ヴィセンテは“やりくり上手”なクラブと言える。今季、過去の登録違反で受けた強制降格処分が10年以上ぶりに撤回されて3部リーグから2段階昇格を果たした前例のない“昇格組”ながら、現在10位につけている。リーグ戦で首位ポルトに土をつけたわずか2クラブのうちの1つがジル・ヴィセンテだ。 「(現在多くのクラブが財政的に困難な状況にあるが)ジル・ヴィセンテは3部リーグから1部リーグにジャンプアップしてきた昨年、同じような状況で仕事をしてきた。大きな財源のない中で、(1部リーグで通用する)全く新しいチームを作り上げる必要があった。我々にとって、若くて才能があり、低コストで獲得できる選手を見つけるというのは、今に始まったことではないんだ」  レーニョ氏はジル・ヴィセンテのタレント発掘能力に胸を張る。「日本の市場を意識している」というのも嘘ではないだろう。実際、今季の補強ではポルトガル国内のみならず、ブラジル、セルビア、アルジェリア、UAE、ポーランド、トルコ、イタリア、フランス、デンマークといった多様な国から選手を獲得して戦力にしている。  ポルトガルやブラジルにルーツを持つ選手は多いものの、新戦力のほとんどが移籍金のかからないフリーの選手かレンタルで、1人の選手を売却したことで移籍市場での収支はプラスだった。無名の選手ばかりでも、中位に進出するという結果も残している。 ●「来季の準備をできるだけ早く完了させたい」  藤本の獲得に関して「現時点では話さない方がいい」と明言しなかったものの、将来的な日本人選手との契約に関して「我々にとって条件のいい選手が見つかれば、もちろん物は試しだね」とレーニョ氏は可能性を閉ざさなかった。  昨年8月に右ひざ前十字じん帯損傷と半月板損傷という大怪我を負い、いまだ復帰できていない藤本を獲得するのには財政面だけでなく戦力面でのリスクも伴う。だが、1年間のレンタルで手元に置いて実力を確かめる形であれば十分にポルトガル移籍の可能性はあるのではないかと思う。もちろんこちらの深読みで、実現しない可能性もある。  ただ、今季から東京ヴェルディのキャプテンを任された20歳がポルトガルを出発点に欧州で揉まれれば、日本代表を背負って立つ選手にもなれるだろう。昨年のU-20ワールドカップでは左足から繰り出される精度抜群のパスや、卓越したゲームメイクで特大のポテンシャルを世界に示した。 「ポルトガルではもうすぐリーグ戦が再開する(6月3日にポルティモネンセ対ジル・ヴィセンテが開催予定)。私の見立てでは、ジル・ヴィセンテはファンのいないスタジアムという新たな環境にもうまく適応できると思っている。そして、我々は来季に向けた準備をできるだけ早く完了させなければならない。 可能な限り最高の順位でシーズンを終えられるよう戦い、(既存の)選手たちを評価していくつもりだ。私はポルトガルリーグがもっと多くの皆さんに観てもらえるようになると信じているよ。そして、落ち着いたら日本にも行って、Jリーグのクラブを見て回りたいね」  レーニョ氏の発言は示唆に富むものばかりだった。果たして藤本の欧州挑戦は実現するのか。新型コロナウイルスの影響で先の読めない特殊な状況は続くが、次世代を担う若手有望株の今後の動向を興味深く見守っていきたい。 (取材・文:舩木渉)

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