ポスト安倍 農政観は?
安倍晋三首相(自民党総裁)の辞任表明を受け、後継総裁選びに向けた動きが活発化している。有力候補に挙がる同党の石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官は農業・農政にどのような考え方を示してきたのか、振り返った。
石破氏 農相時には改革派
ポスト安倍候補の3氏で最も「農政通」として知られるのは石破氏だ。農水政務次官を2度務め、08年発足の麻生内閣で農相に就任。14年発足の第2次安倍改造内閣からは地方創生担当相を務めた。農村部での知名度は高く、18年の総裁選では地方票の45%を集めた。 ただ、石破氏は農相時代に米生産調整の「選択制」、JA・企業などでつくる「地域マネジメント法人」を提起するなど、改革派でも有名だった。後継となった場合、安倍首相が進めた生産調整見直しや農協改革をどう展開するか注目される。
岸田氏 消費者行政に精通
逆に、最も農政のイメージから遠いのが岸田氏だ。12年発足の第2次安倍内閣から外相を長く務め、退任後は政調会長に就任。安倍首相が後任に据えたい「意中の人」とされてきたが、農業関係の要職は経験していない。 だが、消費者行政推進担当相として消費者庁設置法案をまとめるなど、農業と関係の深い消費者行政は第一人者だ。岸田派には林芳正氏、宮腰光寛氏、小野寺五典氏、藤木眞也氏ら農政通が所属。こうした経験や人材が岸田氏の農政の鍵を握る。
菅氏 安倍路線の主導者
菅氏は農水省の奥原正明元事務次官を重用し、安倍政権が進めた農政改革を実質的に取り仕切ったとされる。後継となれば、農政でも「安倍路線をそのまま引き継ぐのではないか」(自民党農林幹部)との見方がある。 秋田県の農家出身の菅氏は、政府の農福連携や野生鳥獣の肉(ジビエ)に関する会議の議長なども務める。近年は同党農林幹部の森山裕国対委員長との関係も深めている。森山氏らの助言を受け、生産現場の理解を得られる農政を進められるかが課題となりそうだ。
日本農業新聞