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強いドル不信を映す過去最高値の金価格

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NRI研究員の時事解説

金投資はインフレヘッジの役割を果たさない

7月27日のニューヨーク市場では、金先物価格がトロイオンス当たり1,945ドルまで上昇し、2011年9月につけた過去最高値の1,923ドルを上回った。これは、約9年ぶりの最高値更新である。さらに28日のアジア市場では、金先物価格は、ついに2,000ドルの大台に乗せた。 他方で、27日のニューヨーク市場では、ドル指数(DXY)は2018年6月以来、約2年ぶりの低水準まで下落した。 こうした金価格とドルの動きは、相互に深く関係していることは疑いがない。コロナショックで一気に表面化した米国の「日本化」懸念が、ドルの信認を低下させ、ドル資産から金への資金シフトを促している。 金は長い間、インフレから資産を守るインフレヘッジの代表的な投資対象とされてきた。例えば、2008年のリーマンショック(グローバル金融危機)後にも、投資資金は金市場に流入した。大幅な金融緩和策と巨額な財政出動が、先行きインフレを加速させ金の価値をさらに高める、と多くの投資家が考えたからだ。 2011年に金価格はトロイオンス当たり1,900ドル近辺まで一時上昇したが、インフレの加速は実際には生じなかった。物価上昇分を差し引いた実質リターンの年平均値を計算すると、1980年以降で米国株は+7.9%、米国債券は+6.2%であるのに対して、金は-0.4%と極めて低い。金への投資はインフレヘッジの役割を十分に果たしていないのである。

金融・財政政策効果への期待は大きく低下

リーマンショック後と同様に、コロナショック後の米国では、政策金利が一気にゼロ近傍まで引き下げられるとともに、積極的な財政拡張策が進められている。米国では3月以降、3回にわたる経済対策が実施されてきた。その規模はGDPの15%にあたる3兆ドル規模にまで達している。 一方、与党共和党は、1兆ドル規模の追加景気対策を現在打ち出している。この規模で追加策が決定されれば、経済対策の合計規模は、通常の年間歳出規模の4.4兆ドル近くにまで迫る。 しかし、こうした異例の積極金融緩和、財政出動が功を奏して、米国経済が強く回復するとの期待が、金融市場で高まっている訳ではない。そうした期待は、むしろ低下しているだろう。米国では感染の拡大に歯止めがかからない中、経済活動の回復が遅れている。そのため、景気対策を繰り返さなければならない状況に追い込まれているのである。 仮に追加の景気対策を講じなければ、今までの経済対策の効果を剥落することで、景気に悪影響を引き起こす「財政の崖」が生じてしまう。追加の景気対策実施の主な狙いは、次第に「財政の崖」を回避するためとなっていき、前向きな要素が薄れている。そのため、景気対策の効果に期待する市場の機運も着実に低下している。また、経済対策を繰り返す中で、財政赤字は急速に拡大していく。 他方、コロナショックを受けて米国経済の潜在力やインフレ期待が低下する中、金融緩和の効果についても、金融市場での期待は低下している。その結果、低金利が長期化する、との期待がより強まっているのである。