ピレリ、F1チームの開発能力に驚き。2024年シーズンのスピード向上は”予想以上”と明かす「頭打ちになると考えていた」
F1にタイヤ供給を行なうピレリは、今季のF1チームによるスピード向上は「予想以上」であり、タイヤへかかる負荷に気を配っていると語った。 【リザルト】F1 2024 アブダビGP 予選 現行“グラウンドエフェクト”レギュレーションでの3年目となった2024年シーズン。各チームは安定した基盤を元にマシン開発を押し進めており、ここ最近のグランプリでは各チームが予想以上にタイムを削っていることが浮き彫りになっている。 マクラーレンのランド・ノリスは予選で1分22秒595をマークしてポールポジションを獲得。昨年レッドブルのマックス・フェルスタッペンが記録した1分23秒455というポールタイムを1秒以上更新した。 ピレリのF1チーフエンジニアであるシモーネ・ベッラは、2024年マシンが「非常に速い」ことを認め、タイヤにかかる負荷が予想以上だと説明した。 「直近のレースでは、予想以上に大きな負荷がかかっている。2~3チームは特に、非常に高い負荷を(タイヤに)かけている」とベッラは語った。 「シミュレーションは通常、シーズン終盤と中盤に一回ずつ行なわれているが、このような負荷がかかるとは誰も思っていなかった。基本的に、予想を越えていたと言える」 「ある時点で、彼ら(チーム)はパフォーマンスの最大レベルに達するだろうと考えていたから、彼らがどれだけマシンを改善しているかというのは興味深い」 「しかし、まだまだ高い負荷がかかる余地があるし、パフォーマンスの上げ幅もある。例えば、最近のレースではメルセデスがかなり改善しているのが分かる。非常に興味深い」 下のグラフは、昨年と今年のポールポジションタイムを比較したモノ。開催時期に差はあるものの、1年でラップタイムがどれだけ向上したかを示している。 ■グランプリ 2023年 2024年ポールタイム バーレーン 1分29秒708 1分29秒179 サウジアラビア 1分28秒265 1分27秒472 オーストラリア 1分16秒732 1分15秒915 アゼルバイジャン 1分40秒203 1分41秒365 マイアミ 1分26秒841 1分27秒241 モナコ 1分11秒365 1分10秒270 スペイン 1分12秒272 1分11秒383 カナダ 1分25秒858* 1分12秒000 オーストリア 1分04秒391 1分04秒314 イギリス 1分26秒720 1分25秒819 ハンガリー 1分16秒609 1分15秒227 ベルギー 1分46秒988 1分53秒574* オランダ 1分10秒567 1分09秒673 イタリア 1分20秒294 1分19秒327 シンガポール 1分30秒984 1分29秒525 日本 1分28秒877 1分28秒197 アメリカ 1分34秒723 1分32秒330 メキシコ 1分17秒166 1分15秒946 サンパウロ 1分10秒727 1分23秒405* ラスベガス 1分32秒726 1分32秒312 カタール 1分23秒778 1分20秒575 アブダビ 1分23秒455 1分22秒595 *ウエットコンディション 2024年シーズンの改善が大きかったものの、それが2025年にどれだけ反映されるかどうかは分からないとベッラは言う。 「11月末にチームのシミュレーションを受け取ったので、今はそれを詳しく見ているところだ」 「今のところ、まだハッキリしたことは分からない。もちろん、ある程度の改善は予想しているが、パフォーマンスの向上が、例えばもっと低いモノになるのか、もっと安定した状況になるのか、データから理解する必要がある」 ■タイヤ空気圧での対応 ピレリは常に、負荷の増大によってタイヤが限界を越え、問題が発生する危険性を念頭に置いて対応を行なってきた。2023年イギリスGPのように、耐久性向上のためにタイヤ構造を変更するといったこともあった。 しかし2025年シーズンは、新テクニカルレギュレーションが導入される2026年のコンパウンド選定に当てられるため、そうした対応が行なわれる可能性は低いだろう。 ベッラは、ピレリが来年そうしたことをしたくないと語った。 「基本的に、シーズン中にタイヤ構造を変更するのはフェアではないと思うから、そうしたことはしたくない」とベッラは言う。 「我々はひとつの仕様を提供し、残りシーズンも同じであるべきだ」 「昨年のシルバーストンの一件は、非常に厳しかった耐久性の改善が理由だった。我々はタイヤがよりきちんと力を発揮できるよう提案を行なった」 「しかし、新しい構造によって、耐久性とスタンディングウェーブ現象の両方が改善されたから、来年は同じようなことが起こるとは思っていない」 ピレリとしては、負荷の増加によるトラブルへの対処として、シーズン中のタイヤ空気圧を上げるということも考えられる。ただ、これはケースバイケースだ。 「ピレリとしては空気圧を上げることもできるが、あまり上げすぎない方が良い。チームもそう考えている」 「そうするとオーバーヒートやグレイニング(ささくれ摩耗)が始まる。プレッシャーはなるべく低く保ちたい」
Jonathan Noble