不登校児童が急増、過去最多 孤立深める親子支えるフリースクール、開設や拡充の動き
不登校の小学生が急増している。国の調査では2022年度の広島県の不登校児童は2759人で最多を更新。前年度から33・8%の大幅増となった。しかし、小学生を対象としたフリースクールは少なく、孤立を深める親子も少なくないという。そんな中、この4月に広島市内で相次ぎ2施設が開設や拡充した。安心して子どもが過ごせる居場所づくりが急務となっている。 【写真】広島市内で開設、拡充の動きがあるフリースクール 広島市南区段原に拡充移転した「パルク」。元小学校長だった公認心理師小田原かおりさん(60)が、学校を退職した2年前の秋に開いたフリースクールだ。 県内の小中学校と教育委員会で計36年働いた小田原さん。不登校児の親が「仕事で留守にしている間、子どもが1人になるのが不安」「親子でずっと家にいると煮つまる」と悩む姿を見てきた。保護者と一緒にフリースクールを探した経験から、児童対象の施設が少ない現状を知って「ないなら自分でつくろう」と決めたという。 パルクで子どもたちは学習したり近くの比治山で自然観察したり。多様な生き方や働き方に触れる目的で、地域のお好み焼き店主や大工から学び、企業見学もする。 さらに、小田原さんは学校と保護者の「間に入る人」の役割も担う。学校側に子どもの様子を伝え、担任が声を掛けるタイミングや内容を話し合う。「校長時代、不登校の子どもの状況を把握しづらいケースもあり、どうアプローチしていいか悩んでいました」。そんな経験から、学校との情報共有を大切にしており、これまで複数の児童が学校に通うようになったという。 小学5年の娘を通わせて1年になる母親は「娘が不登校になった当初は親子で自宅に引きこもっていた」と振り返る。「つらい」と泣く娘にどうしてやっていいか分からず、担任との連携もうまくできない自分を責めたという。「娘も目に見えて元気になったし、ここでは親を否定せず一緒に考えてくれる。そんな場があることが本当に心強い」と話していた。 安佐北区亀山の古民家でオープンした「オカザキッズ」は、若者自立支援に取り組むNPO法人ブエンカミーノ(同区)が運営している。スタッフの中心になっているのは、わが子の不登校を経験した母親たちだ。 同法人の居場所事業責任者の金志明(キムチミョン)さん(43)もその1人。4児を育てており、小学6年の次男は1~2年生の時に「学校に行ったり休んだり波がある状態が続いた」という。共働きのため「朝、子どもが学校を休むと言った瞬間、仕事を急いで調整して子どもの昼食の準備をしなきゃってなるんです。イライラしてしまって苦しかった」と振り返る。 その後不登校児の親たちと出会い、みな孤立感を抱えていると知った。「子どもが同世代の友人と関わりながら健やかに楽しく過ごせる場が地域に必要」との思いが膨らみ、オカザキッズ開設に至った。 カードゲームを通じてコミュニケーション力を育んだり、近くの川で泳いだり。学習は元小学校教諭のスタッフが教えている。子どもを見守る親のケアも必要として、親同士の交流会も開いている。
中国新聞社