女子サッカー・WEリーグ 国立開催で見えた可能性「行ってみたいと思わせることが大事」
5月14日に行われた女子サッカーの国内プロリーグ「WEリーグ」で初となる国立競技場での一戦、INAC神戸レオネッサ対三菱重工浦和レッズレディース戦は、1万2330人の観衆が集まるなど盛り上がりを見せ、試合も白熱。結果は、浦和が安藤梢選手のゴールで1-0と勝利し、WEリーグ初代チャンピオンのINAC神戸に意地を見せる形となったが、両チームの選手の奮闘、ホームチームとして運営を担ったINAC神戸のクラブ一体となった頑張りもあり、WEリーグの可能性を感じさせる1日となったのは間違いない。 【動画】WEリーグ初の国立開催! INAC神戸対浦和L、ハイライト そんな歴史に残る試合を、16日に放送されたINAC神戸応援ラジオ番組『カンピオーネ!レオネッサ!!』(ラジオ関西)のなかで、パーソナリティーの近藤岳登(元Jリーガー)と赤﨑夏実が、リスナーから寄せられたメッセージとともに振り返った。 実際に国立競技場に足を運んだ赤﨑は、「やっぱり雰囲気がむちゃくちゃ良かった! スタジアムも素晴らしいし、両サポーターが打ち鳴らすハリセンの音もあったり、早い時間帯から多くのファン・サポーターが集まっていたので、試合前からずっとボルテージが上がっている、すごい熱い雰囲気だった。国立で試合を見ることができて本当によかった!」と興奮冷めやらぬ様子。 特にINAC神戸GK山下杏也加選手のプレーには感動したようで、相手のPKを止めたシーンでも「一番あそこが沸いたと思う。相手も(得点ランキング1位の)菅澤(優衣香)選手ですが、ピーンと張りつめたあの空気感のなか、みんなが『お願い、止めて……』と祈っている思いに応えて、バチーンと止めましたよね!」と、臨場感たっぷりに当時の様子をリポート。「山下選手はかっこいいし、頼りになる選手。(試合にかける)思いがすごく伝わってきました。試合中もあれだけ人が入っていても、山下選手の声がずっと聞こえてくるくらい気迫がすごかった」。 そのPKストップのシーンでは、山下選手も、「菅澤選手が蹴ってくるのは想定していた。ハイライトでもよく右側に蹴って決めているイメージがあり、自分の左側にフェイクを入れて右に飛んだ。シュートの高さは気になったが、低いシュートで置きに来るだろうなと思い、タイミングもバッチリだったので、なんとか止めることができてよかった」とコメント。 この話を受けて、元Jリーガーの近藤は、「すごいな! 心理戦では確実に勝っていたというわけだ。よくPKではGKのほうがプレッシャーは少ないといわれるが、おそらくあのシーンでは左にフェイクを入れて右に飛ぶ、さらに右によく蹴っていたという分析をしていたということで、なんか完全に蹴る前から勝負ありよね。『私、あなたのコース、わかってますよ』みたいな余裕は、キッカーに絶対伝わるし、山下選手にはそんな(止めるという)オーラがある」と脱帽。「INAC神戸は、そんな選手が一番後ろにいてくれる。年間MVPも十分にあるし、俺はとってほしい」と、今シーズン、チームを頂点に導く活躍を見せ続けている守護神を絶賛していた。 また番組では国立に駆け付けたINAC神戸サポーターからのメッセージも届き、「慣れ親しんだINAC神戸の選手たちが国立で堂々とプレーし、ピッチサイドでは安本(卓史)社長はじめスタッフの方が走り回っている姿が見られた。この試合を実現するためにどれほど苦労したことか想像もつきないが、スポンサー集め、集客、企画、運営、すべてが100点じゃなかったかもしれないけど、見に来た人には十分その気持ちは伝わったと思う」と、国立ホームゲーム開催に尽力したINAC神戸へ、ねぎらいの言葉も。「女子サッカー界にとってはこの試合はきっと始まりだと思う。女子チームが聖地で当たり前のように試合が来る日が来てほしい、男子サッカーの女子版ではなく、女子サッカーとして、男子サッカーとは違う楽しみ方ができるスポーツであってほしいと切に願います」という声も寄せられた。 一方、東京の友人家族とともに観戦した赤﨑は、その時のエピソードも披露。「5歳の女の子も一緒だったが、その子はサッカーを始めたてで、試合を見ながら『どっちに蹴るの?』、『これはなんでピーというの?(笛が鳴るの?)』って、ずっと試合中に言っていたり(興味津々の様子で)、目をきらきら輝かせながら『すごいかっこいいい』と。最後には『私もここでやりたい』『みんななんでここでサッカーしているの?』と話していたので、『頑張って練習してサッカーを好きになったらここに出られるんだよ』『頑張って練習してプロになろう!』とみんなで言っていた」。国立という大舞台で躍動する選手たちの姿に、未来のWEリーガーを目指す子どもたちも目を奪われていたようだ。 近藤は、「WEリーグの課題の1つは、いかに(生観戦に)行ってみようと思わせること。今回の国立開催の事例をみて、夢と希望を与えるため、サッカー自体が盛り上がるのももちろん大事だけど、どれだけエンターテインメントがあり、どれだけワクワクする思いでそこにいきたいって思わせるかどうかが本当に大事だなと感じた。それがあれば、将来ここでやりたい、プロになりたいと思うわけなので」と、持論を展開。 また、近藤は「みんなが注目する試合だったからこそ……INAC神戸は勝たなきゃいけなかったと、今、ふつふつと思ってきた。スタッフの皆さんが夜遅くまでずっといろんな準備をしてくれて、いろんなところに駆け回って、スポンサーにもついてもらっていたなか、INAC神戸のほうがパワー、気持ちは見せなきゃいけなかった。そこは事実としてあるなと思う」とチームには厳しい言葉もかけつつ、「今シーズン最終戦では、しっかり勝利で終わって有終の美を飾ってほしい。田中美南選手にも得点王を狙ってほしい!」とエール。また、INAC神戸サポーターには「今年一番の熱量をNACK5スタジアム大宮に送ってほしい」と呼びかけていた。 2021-22WEリーグの最終戦となる第22節の5試合は、5月22日(日)午後1時から一斉開催。INAC神戸はアウェイのNACK5スタジアム大宮で、鮫島彩選手、仲田歩夢選手らを擁する大宮アルディージャVENTUSと対戦する。
ラジオ関西