全国に計1000万人、希少疾患の子どもと家族を支える健やか親子支援協会の取り組み
希少難病の子どもたちと家族を支える“健やか親子支援協会”。理事を務める佐谷秀行先生(藤田医科大学 がん医療研究センター センター長、慶應義塾大学 医学部 名誉教授)の専門はがん、それも脳腫瘍の基礎研究です。一見すると関連性が薄そうですが、1人の患者さんとの出会いがキャリアに大きな影響を与えたと佐谷先生は語ります。希少難病の子どもたちと家族が抱える困難、それを支える健やか親子支援協会の取り組み、新たな課題“ドラッグ・ロス”、そして患者さんに寄せる佐谷先生の思いとは――。
◇実は他人ごとではない希少難病
小児希少難病とは、罹患する人数が非常に少ない病気です。しかし、希少難病全体としてみると罹患する割合は非常に高く、世界の人口の17人に1人といわれています。疾患数としては7000種類以上あり、症状が非常に軽いものから重いものまでさまざまです。日本国内の患者数は合計で750万~1000万人と推定されています*。問題は、一つひとつの疾患の患者数が少ないことで薬剤や治療法の開発が進みにくいことです。また、専門医が少なく、医師の間でも疾患に対する理解度にばらつきがあることも課題です。 健やか親子支援協会は2015年に設立された団体で、希少難病の子どもたちとそのご家族の支援を行っています。活動は▽“希少難病の検査機関・専門医の検索サイト”の構築▽検査を行った際の検体輸送サービスの提供▽生活基盤を安定させるためのご家族の就労支援や経済的支援を目的とした基金・保険の創設▽希少難病に対する啓発・広報――など、多岐にわたります。昨年より開始したエンジェルスマイル基金による難病児ファミリー応援給付金事業は、今年も実施しています(条件、応募方法など詳しくは<https://angelsmile-prg.com/archives/947>、締め切りは2023年10月20日正午)。 *NPO法人希少難病ネットつながる
◇検索サイトの充実で早期発見へ
今、特に力を入れて取り組んでいるのは“希少難病の検査機関・専門医の検索サイト(https://angelsmile.scuel.me/)”の充実です。2023年7月に行った大幅リニューアルで、掲載している疾患数を70前後から189に増加させました。 多くの希少難病の患者さんは、なかなか診断に至らず、治療を開始するまでに長い時間と労力を費やすことが少なくありません。小児で発症した場合は、患者さん本人だけでなくご家族にも大きな負担が生じます。そのため、検索サイトを通じて、かかりつけ医に「どこに行けば専門的な検査を受けられるか、専門医はどこにいるのか」の情報を提供することで、早期に専門医にアクセスし診断に結び付くことを目指しています。 広く公開しているサイトですので、患者さんやご家族を含む一般の方もご覧いただけます。しかし、それぞれの患者さんの状態を一番よく理解されているのは、担当医またはかかりつけ医の先生です。心配なことがあれば、まず担当医やかかりつけ医の先生にご相談いただければと思います。