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補助具で雪上移動車 イスでスケートも

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オルタナ

■世界のソーシャルビジネス 欧州編 スイス

雪上を歩くには滑りにくい靴が適しているが、車イスやベビーカーでの移動は逆に滑りやすいほうが良い。それなら滑る器具を装着すればいいと、車イスで生活しているパトリック・マイヤー氏は車輪に装着する補助具を開発した。このアイデア商品なら、スケートさえ可能だ。(チューリヒ=岩澤 里美) ミニスキーと呼べるような「ホイールブレーズ」は、山間部で雪が積もり、雪山を散歩する人が多いスイスならではの製品だろう。使い方はとても簡単で、車イスの前輪を板にはめ込み、レバーでロックするだけだ。 取り外しも、車イスを少し浮かし、使用者自身であっという間にできる。コンパクトなサイズのS(約2万5240円)は車イス用(車輪の幅2─6.5センチメートル用)で、大きめのXL(約1万6781円)は車輪が大きいベビーカー類に装着する。グラスファイバーを混ぜたプラスチック製で、耐久性は抜群だ。 開発に8年かかり、2011年冬から販売を開始。20カ国に販売経路を持ち、同社オンラインでの販売も好調で、世界中から注文がある。 目下、マイヤー氏が1人で切り盛りし、「製造も販売も、とても良いパートナーたちがスイスにいるので1人でも大丈夫」と話す。

デザインはクールに

ドイツ出身のマイヤー氏は9歳でスノーボードを始め、プロになろうと決めた。 10代後半にスイスでトレーニングを積み、夢をかなえた。しかし、約20年前の21歳のとき、試合中の事故で車イスの生活となった。 ホイールブレーズの開発のきっかけとなったのは、雪のある美しい場所へ出かけたときのことだった。誰かに車イスを押してもらうのは嫌だったし、雪深いとどうしても入って行くことができなかった。 「障がい者は町の中だけでなく、自然の中も自由に動き回りたいはずだ」。そう考えたマイヤー氏はありったけの資金をつぎ込んで、素材探しやデザイン決めを進めた。 自身の経験から、リハビリ器具は全体的に機能重視で、洒落たデザインが少ないと感じていたため、自分の製品は障がいのあるなしに関係なく、誰もが使ってみたいと思えるデザインを目指した。製造には、障がい者施設の人たちもかかわっている。 「初めは、とにかく弱者に役立つ製品を作りたかったのが、徐々に、起業家として生きて行こうという気持ちが芽生えた。プロスポーツの世界とは離れたが、自分は正しい選択をした」と自信に満ちている。同社では、第3の製品「セーフティー・フット」も販売している。これは、手持ちの杖に装着する足で、雨、雪、石、砂、葉などあらゆる表面上で使っても滑らず、高齢者にも優しい製品だ。 *雑誌オルタナ59号(2019年12月17日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載

岩澤 里美

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