「裏金議員に厳しいNG」石破サプライズが起こった決定的な理由
自らの退陣と引き換えに
このあたりまではある程度、想定されたものだったが、踏み込んだと評価されているのが、「裏金不記載は比例重複NG」の方針だ。 「処分の有無に関係なく、収支報告書に不記載があった衆院議員は小選挙区と比例代表との重複立候補を認めないとのことです。少なくとも30人、最終的に50人程度にもなる可能性があります」(同) そもそも裏金問題は前任の岸田前首相の時に発覚した「負の遺産」だ。 「岸田氏は在任中に自ら率先して政倫審に出席したり、派閥解消を訴えたりして信頼回復に腐心しましたが奏功せず、自らの退陣と引き換えに問題の幕引きを狙ったわけです。それが石破首相になってからも問題が炎上し続けていることについては各方面からも、“何でも反対の野党に引きずられている”“処分が済んでいるのにトップが変わったからまた蒸し返されるなら組織のガバナンスが問われる”などといった指摘もあります」(同)
何が判断を後押ししたのか
この件についての党内と世論の温度差は大きい。誰が総裁になり、首相となったとしても同じ問題に直面したのは確実。結局のところ迫られるのは大きく分けて、「甘い処分にして裏金問題と関係ない議員も含めた総倒れのリスクを高める」か「厳しい処分にして関係ない議員のリスクを低減させる」かの二択だった。もともと「裏金議員」「非裏金議員」双方がウィンウィンの結論など存在しなかったと言えるだろう。 とはいえ、想定よりは厳しい処分に打って出た石破内閣。何が判断を後押ししたのか。 「やはり“旧安倍派憎し”が背景にあるという指摘がありますね。今回の議論の推移も結果的にもそのようになっている印象があります。加えて、10月27日投開票の総選挙ですね。政治とカネの問題に厳しい姿勢を見せなければ、影響が避けられないという危機感があり、想定された以上の対応を決めたのでしょう」(同)
野党も読みきれていない
「野党もそこまでは読みきれておらず選挙協力もなかなか難しいようですが、相変わらず批判を続けることでしょう。あとは世論がどのように判断するかと言うことなのだと思います。国民の声の中には、裏金問題をいくら追及しても私たちにメリットはない、経済政策で生活をサポートしてほしいという声が根強くあるようです。あっちこっちとブレた結果、ならば最初からやればよかったのではないかといった指摘は当然あるでしょうが、このプロセスも含めて国民に審判を委ねるということになるのでしょう」(同) 大量の比例重複NG候補者が出るなど、大きな混乱が予想される10月27日の決戦。公認の数を減らした関係で、自民党単独で過半数という勝敗ラインから自公与党で過半数に下げる可能性も取り沙汰されている。すでに政局はスタートし、総選挙の結果次第では、冷遇されることになった旧安倍派が不穏な動きを取ることも想定される。さらに大きな政治的な動きが始まるのかもしれない。 デイリー新潮編集部
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