「一緒に死のう」92歳寝たきり母を殺害 残された最後のメモ 繰り返される介護殺人
■「要介護5」認定を受けた母親
フランス料理の料理人をしていた前原被告。2009年ごろ、被告が40代後半の時に母親の房子さんに直腸がんが見つかり、人工肛門を装着することになりました。介護が必要な状態となり、フルタイムでの勤務ができなくなります。 さらに2019年、母親が脳梗塞(こうそく)で入院し、日常生活の大半にサポートが必要な「要介護5」の認定を受けることに。前原被告は自宅で母親の介護に専念するため、仕事を辞めざるを得なかったといいます。 前原被告 「フルタイムで24時間(介護の)対応するようになりました。カテーテルの廃棄、たんの吸引、酸素の管理、あとは点滴の抜針。このほかにも一般的に介護といわれることをやっていました」 母親は寝たきりだけでなく、認知症の症状も認められ、訪問診療や訪問介護を受けるようになりました。 弁護側 「朝何時ごろに起きる?」 前原被告 「5時前です。母の朝食の用意です。母の血糖値の測定をします。朝食を食べさせます。45分から1時間くらいかかりました」 弁護側 「そのあとは」 前原被告 「血糖値の測定、インスリン投与」 前原被告は「朝昼晩の食事の準備に介護、一日のほとんどを母親のために使っていた」と語りました。
■借金で生活困窮「預金4015円」
さらに重くのしかかったのが生活費。介護費用だけでなく、前原被告には銀行などからおよそ500万円、知人からおよそ300万円の借金もあり生活は困窮していました。 検察側 「持ち家を不動産屋に売却しましたね。いくらで売れましたか?」 前原被告 「2200万円ぐらいだったと思います」 そこで、持ち家を売却したのち、その家に借家として住む契約を結び、一時的に2200万円の現金を得た前原被告。そのお金を借金返済などに充てましたが、3年で底を尽き、また新たに借金を抱えてしまったといいます。 2022年、とうとう母親の年金だけでは追いつかず、家賃が払えない状況に…。犯行が頭をよぎるようになったといいます。 収入は母の年金や保険の還付金などで、平均月18万円。これに対して、支出は家賃17万5千円、消耗品などの支払いも含めた携帯代が6万円、介護費5万円。そして、毎月の借金返済が10万円。合計すると、平均月40万円ほどの支出となり、毎月20万円ほどの赤字となる計算になります。 前原被告 「生活費が足りなかったです」 そして、母親を殺害。その頃の預金はわずか4015円だったといいます。