【定評を継げるのか】フォルクスワーゲン・ゴルフGTIへ英国試乗 レシピが違う8代目 後編
高い集中力が必要なほどに速い
text: Matt Saunders(マット・ソーンダース) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 8代目ゴルフGTIの運転席に座ると、四隅が掴みやすい。ヘッドレストはシートと一体になったが、快適性は高い。サイドサポートも充分にあり、良く体を支えてくれる。お約束のタータンチェックで仕立てられ、見た目もいい。 【写真】8代目ゴルフ タイプR/メガーヌRS (98枚) ステアリングホイールやペダルは、ドライバー正面の、適切な位置にある。シフトノブはやや大きく、ステアリングホイールのリムは少し太すぎる。でも、見過ごせるレベル。 ステアリングホイールのスポークには、タッチセンサーが並ぶ。レイアウトは混雑気味で、うっかり間違って触れてしまうこともありそうだ。 モニター式のデジタルメーターは、筆者は気に入った。グラフィックは鮮明で、表示内容も切り替えられる。ハニカム模様に浮かぶ、GTIのロゴも悪くない。 おなじみのEA888型2.0L 4気筒ターボエンジンは、まだ文化的。踏み込んだアクセルペダルを放しても、破裂音が鳴ることもない。高負荷時に、高音を響かせることもない。穏やかに運転すれば、抑制の効いたハミングを耳へ届けてくれる。 トルク感は予想以上。2500rpmを過ぎたところから鋭さを増し、激しくGTIを引っ張ってくれる。 5000rpm以上回しても、さほどドラマ性はない。特長の薄いMTの操作感や、ペダルの重さも、エンジンの回転数を自在に操りたいという誘惑を薄くしている。 パワーバンドを掴んで運転すれば、GTIは非常に力強く、勢いよく走る。集中力を高める必要があるほどに、速い。
引き締められたぶん、ハンドリングも向上
サスペンションは、モードによっては硬さが若干強調される印象。少しの我慢も必要に感じるほどで、熱い気持ちが冷めないよう鼓舞してくれる。 不意に舗装が悪くなると、GTIらしいしなやかな乗り心地を求めて、15段階のアダプティブ・ダンパーの設定を変えたくなる。気が散るし、硬いことが強調されてしまう。 強い垂直方向の入力が一方のタイヤに加わると、アダプティブ・ダンパーを最も柔らかい状態にしていても、吸収しきれない場面もあるようだった。ツギハギの多い高速道路では、細かな揺れが感取される。落ち着きがあるとは、いえないだろう。 強化されたリア・サスペンション周りが、原因だと思われる。それが、ハンドリングを向上させている要因でもある。ただし、基本的にGTIは多くのライバルより乗り心地が良い。 今回、筆者は1日をかけて、高速道路から郊外の道までさまざまな条件で走り込んだ。低速域では引き締まり、鋭いレスポンスが得られている。ハンドリングはリニアで、操縦で得られる反応も予想通り。軽快で滑らかで、運転しやすい。 速度域が上がるほど、シャシーは機敏に反応し、安定性も高まるように感じられた。GTIという性格に、変化はないようにも思えた。 さらに都市部から郊外を抜け、ワインディグへ向かう。様々な路面の変化や起伏、勾配、カント、カーブなどを試すために。8代目ゴルフGTIは、フィルターで濾過するように、さまざまな状況を吸収し、滑らかにまとめてくれる。高速なゴルフらしく。