「PTA会長歴任で培ったスキルを活かして」二児のママで入門を果たした落語家・三遊亭あら馬「下っ端は喋るな」10代の先輩に頭を下げて
39歳で落語家に入門した三遊亭あら馬さん。最年長の前座として、周りと異なる立場でありながら、PTA活動で得たスキルを活かして伝統芸能の世界を邁進。今では離島から特別支援学級まで、落語で子どもたちの教育に挑戦するその理由とは。(全4回中の3回) 【写真】「怖すぎる!」PTA活動の一環(!?)で奮闘する三遊亭あら馬さん「ここまでするの?」(全21枚)
■黙るのがいちばんの修行でした ── 39歳での入門は落語芸術協会では最高齢だったそうですね。どのような苦労がありましたか? あら馬さん:伝統芸能は入門年が早い方が覚えも早く、中卒・中退は「箔がつく」世界。周りの前座の先輩はみんな歳下。対して世の中は年功序列。私のほうが、確定申告もゆうパックの送り方も知っている。とはいえ、その年下の先輩から前座のノウハウを学ばねばここでは生きていけませんから、「下っ端は喋るな」が最善策でした。
特に、私は昔タレント活動もしていてアマチュア落語家経験もあったから、ネット情報で事前に出回っていて、最初は「やばいやつが来た、ばばあが来た」みたいな(笑)。だから、私にとっての修行は「黙ること」だったんです。落語のセリフを覚えるよりも、黙るのが大変でした。 ── そういう環境に慣れるまでどれくらいかかりましたか? あら馬さん:前座修行は4年間あるんですが、1年も経たないうちに「しゃべらないほうがいい」とわかって。社会でも笑顔で黙々と仕事をする新入社員のほうが断然かわいい。子どもたちが何かやらかしたときにも、言い訳をされるよりも、しょんぼりされるほうが怒るのをやめてしまいますよね。 非常に理にかなったノウハウが落語界にはありました。
でも、2年ほど経つと周りの先輩から「さすが、あら馬さんは主婦だけあって手際がいいね」と認められるようになって。最終的には仲間として受け入れてもらえました。 ── 年齢を重ねてからの入門だったからこそ、対応できたんでしょうね。 あら馬さん:そう思います。もし20代であれば「なんで私が黙らないといけないの」と、絶対にキレていたでしょうね(笑)。 でも、年齢のおかげで「ここはこらえどころだな」と自然に思えるようになって、自分が丸くなったなと感じましたね。実は、こうした忍耐力はPTA活動で鍛えられたんです。そのスキルが思わぬところで役立ちました。