森友学園問題で注目、財務省理財局とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
国の借金依存で存在感高まる
財務省は旧大蔵省時代から、国のお金の使い方(歳出)を事実上決める主計局や、税の集め方を考える主税局の存在感が大きく、理財局は影に隠れがちでした。 戦後の理財局が力の源泉としたのは「財政投融資(財投)」。郵便貯金や国民年金、厚生年金の積立金すべてが理財局所管の「資金運用部」へ預託され、政府系金融機関や道路公団などの特殊法人に貸し付けられていました。「第二の予算」とまで呼ばれたほどのばく大な金額です。ただ税と違って、財投は預かった金なので返さなければなりません。甘い貸し付けで焦げつこうものなら国民負担につながる恐れがあり、2001年からの財投改革で預託義務が廃止となりました。理財局そのものもまた一時期「廃止」直前まで追い込まれます。 復活したのは理財局の持つ国債(国の借金)の発行と管理権が見直されたからです。戦前の反省から、財政法で赤字国債は発行できなくなりました。しかし1965(昭和40)年に「特例法」制定で封印が解かれると、1975(昭和50)年に赤字国債が再開。近年では当たり前のように発行され、積み上がった借金は1000兆円を超えます。 国債発行がなかった時代には理財局の出番はなし。再開後も日本国債の信用は高く金融機関が入札抜きで受け入れていました。 しかし今は違います。歳入(1年間の国の収入)に占める国債発行は4割にも及び、それなしでは立ち行かなくなりました。いくら主計局が歳出を握っていても、歳入が追いつかなければ予算は組めません。金融機関も以前よりずっと警戒するようになりました。 2008年のリーマンショックは日米欧の経済を直撃し国債の追加発行を強いられました。発行しても金融機関などが買ってくれなければ単なる紙くずです。買い手とのコミュニケーションを通して何とか乗り切りました。 この頃から「理財局は市場と対話できる」と株が上昇していきます。国債の価値が下落すると金利は上昇します。すると借金漬けの日本の利払いも急上昇してしまいます。そこで役立つのが理財局の管理能力。皮肉にも、国の借金依存が理財局の価値を高めている構図です。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など