この国は大丈夫か…30代男性「高学歴難民」が「月10万困窮生活」の末に迎えた「驚きの末路」
学歴があれば「勝ち組」なのか? 月10万円の困窮生活、振り込め詐欺や万引きに手を染める、博士課程中退で借金1000万円、ロースクールを経て「ヒモ」に、日本に馴染めない帰国子女、教育費2000万円かけたのに無職…… 【写真】勝ち組だった「元CA」が採用面接で面接官に言われた「衝撃の一言」 なぜ高学歴でも生きづらいのか? 発売たちまち3刷重版が決まった話題書『高学歴難民』では、「こんなはずではなかった」誰にも言えない実態の数々に迫っている。 ここでは、「これ以上、家族に迷惑を掛けられないと『振り込め詐欺』に加担」と題した30代男性へのインタビューをお届けする。 ※本記事は阿部恭子『高学歴難民』から抜粋・編集したものです(登場人物は仮名で、個人が特定されることのないよう一部エピソードに修正を加えています)。
高学歴難民と犯罪
皆さんは、「犯罪者」と言うと、どのような人々を想像するでしょうか? おそらく、犯罪から連想するのは貧困や暴力であり、高学歴な人々による犯罪と言えば、汚職事件など特殊なケースを思い浮かべる人が多いかもしれません。 ところが、加害者家族の支援を通して、生活困窮や社会的孤立により、振り込め詐欺や窃盗に手を染めた犯罪者の中にも高学歴の人々が存在する事実に衝撃を受け高学歴難民の実態を追い続けてきました。 長年、苦労して手に入れたはずの学歴を前科で汚さなくてはならなくなるまで、難民生活の中で何が起きていたのでしょうか。一見、学歴と無関係と思われる事件の背景に浮かび上がる高学歴難民ならではの「病」とは? 転落の人生に迫りたいと思います。
博士課程修了も月収10万円…
妻にそろそろ子どもが欲しいって打ち明けられたとき、僕にはまだ自信がないとは言えませんでした。 「いつまで待てばいい?」 と迫られ、○年後には就職してると約束もできないし、彼女に任せるしかなかったんです。もちろん、絶対に幸せにしたいとは思っていましたが、結果、こんなことに……。 当時、僕は文系の大学院の博士課程を修了し、大学の非常勤や専門学校の講師を掛け持ちしていました。 月10万円程度の収入しかなく、生計は妻の収入に頼っていたのです。年齢的にもそろそろ子どもが欲しいと妻にせがまれ、妊娠し、無事、子どもが生まれました。 ところが、妻は産後、精神的に不安定になることが多く、僕が働いている間も頻繁に電話がかかってくるようになりました。 妻は寝込むようになり、僕はしばらく、論文を書きながら子どもの面倒を見なければならなくなりました。家計が逼迫しているのに、アルバイトを増やすことも難しい……。 短期で高収入のアルバイトがないか探していたところ、見つけたのが振り込め詐欺だったんです。最初から、リスクが高いのは百も承知でしたが、もう、賭けに出るしかなかったんです。 当時の僕は、育児ノイローゼのような精神状況で、判断能力は落ちていたと思います。言われた通りの仕事をして80万円くらいもらいました。すぐ携帯電話を解約して、半年間は何事もなく生活していたんです。ようやく逃げ切れたのかと思っていた頃、警察官が自宅に訪ねてきました。 騙して得たお金はすでに生活費に使用していたので返金の目途は立たず、僕の加わったグループの被害総額は300万円くらいにのぼったので、実刑判決を受け、1年半刑務所で服役しました。 妻は、僕が事件を起こしたのは「無理をさせた私のせいだ」と自分を責めていましたが、愚かな自分が犯した罪です。それでも妻は待っていてくれたので、現在は知人の会社で働かせてもらい、家族3人幸せに暮らしています。 まるで、何事もなかったかのような幸せな日々が続いていますが、それだけに、我が子を犯罪者の子どもにしてしまった罪悪感に苛まれ、眠れなくなる日があります。どれだけ後悔しても、消せない過去です。 あの時、率直に妻に不安を伝え、実家の家族に協力を頼むべきでした。しかし、収入がない、情けない状況だということを彼女の両親に知られるのが嫌で、見栄を張ったところもあります。 高学歴難民の皆さん、薄給でも別に悪いことをしているわけではないのだから、困ったときは、見栄を張らずに家族と相談するべきです。 言うは一時の恥、言わぬは一生の罪になります。 つづく「私立中高一貫の「お嬢様学校」を卒業、国際線CAになり「人も羨む順風満帆な人生」から一転、転職活動に失敗し「高学歴難民」に」では、「CAから検察官への華麗なる転身を夢見て」と題した40代女性へのインタビューから「高学歴難民」の壮絶な実態に迫る。
阿部 恭子(NPO法人World Open Heart理事長)