「1000店舗→491店舗」「理由は店主の高齢化」と最盛期から半減のやきとり大吉。反転攻勢の秘策は“白い大吉”だった!
これは創業から大吉が掲げるスローガンで、実際に店主にとっては、酒販店も鶏屋さんも宝のような存在だそうだ。特にリース契約で地元から遠い店舗の店主になった人にとっては、子供が熱を出したときに病院を教えてもらうなど、家族のように面倒を見てもらう間柄になることも少なくないという。人間対人間のつながりと信頼があるのだ。 「そこを一切遮断して、スケールメリットだけで物事を進めていくのが果たしていいのか」と近藤社長はためらう。もっともだ。ただ、店主によっては、「クオリティが高く、値段が安くなればいい」という人もいる。だからこそ、そこをどう進めるかは慎重に考えるべきなのだ。
新たな仕組みを作っても、それがどこまで現場に浸透していくか、全員に受け入れられるかは分からない。慎重さはイコール、店主それぞれに対する誠実さと言えるだろう。 一方でグループ内では、「グローバル焼鳥チェーン」として海外に打って出よう、日本の焼鳥をしっかり広めていこうという機運も高まっているという。 ただ、大吉としてはそこも慎重だ。現在、中国にも2店舗出店しており、そこはこれまで同様に地元の鶏店から仕入れている。つまり、日本と全く同じスタイル、同じ味での営業を貫いているからだ。
だが海外に広く展開するなら、そのスタイルのままでは難しい。卸業者と組んで、セントラルキッチンから配送するスキームに変える必要が出てくる。「今すぐにではなく、鳥貴族の海外出店の状況をしっかり見極めていきたい」と、近藤社長は前を見据える。 ■店主と顧客の若返りが最優先事項、秘策は「白い大吉」 そんな大吉が今注力しているのは、閉店を止める施策として、閉店を上回る出店数を確保し、店舗数を回復させることだ。そのためには何をおいてもまず、店主の若返りが必要である。
そこで2023年にスタートしたのが、「エリア指定リース方式」という新たな契約方式だ。この方式は、リース方式で2年間働き、保証金380万円を払えば、リース方式のまま地元の近くの店に移動できるというシステムである。 なぜこの方式が若返りにつながるのか。そこには、日本全体の高齢化の問題がある。ここ15年ほど、親の介護が必要になってきたり、親の面倒を見なければならないという店主が増えてきたのだ。そのため、新たに若者が「店を始めたい」となっても、どの店に配属されるか分からないリース形式を選べないという問題が出てきている。