大阪府守口市でバラまかれた怪文書の数々

議員や市職員へのパワハラ、市政への介入、そして反社会勢力との交際――。 目を疑うような疑惑の怪文書の数々が、大阪維新の会所属の議員に向けて飛び交っている。これらは、大阪維新の会に所属し、当選5回を誇る、守口市選出の西田薫大阪府議（56）に対するものだ。 【写真】「ビックリです」と連呼…直撃に答える西田府議”疑惑を完全否定“するも… 「西田府議は府議会の次期議長候補の筆頭とも言われている大阪の幹部の1人。本人の悲願であった国政進出を目指し、衆議院大阪6区の維新内での予備選に勝ち、候補者に内定しています。彼は上昇志向が強く、パワハラ騒動で離党した笹川理府議が選ばれた今春の府議団の代表戦でもその座を狙い、ギリギリまで支持者集めに奔走していました。その一方で地元守口でのパワハラはヒドいようだ、と府議団からも話を聞くことがあります」（日本維新の会議員） FRIDAY9月8日号では、コロナ禍の2020年に、市職員へのパワハラで百条委員会にかけられて、守口市議4人と共に西田府議も証人として出廷したこと、元職員の嘆きなどを詳報した。しかし、職員だけではなく、守口の市政関係者や市議団、維新の会や彼の元支援者や事務所スタッフなど15名以上に取材すると、見えてきたのは、数々のパワハラ疑惑だった。 もともと維新の会・守口支部に所属した市議だったA氏は、西田府議の人柄についてこう語る。 「自分の手は汚さないように、徹底的に周りを使って“圧”をかけるんです。そして、一度自分に反対した人間は絶対に許しません。百条委員会にかけられた際も、私たち市議が辞職勧告を受けましたが、西田さんは参考人招致されたものの結果的にはお咎めなし。ただ、実際に市議4人をコントロールして、自分の思うように動かしていたのは西田さんです。私も採決事案への反対や、政策について、西田さんの指示や意向に沿って動いてきた1人なので。’19年の市議選挙のあと、当時の市議が西田さんに反対意見を言ったあと、結果的に離党させられた過去があります。そんな様子を間近で見ているから、市議たちは西田さんの言う通りに動くしかないんです」 またA氏は、西田府議の後援会関係者より、「維新をやめろ！」などの罵詈雑言を浴びせられ、強烈な心的苦痛を受けたとも主張する。 「’21年の3月に、私の後援会を集めた講演会場で、西田府議の後援会の方々から強い口調で人格否定を受け、『人としてのあり方が問われる』『維新をやめろ！』と暴言を浴びせられ、一方的に罵られました。驚いたことに、その場に同席していた西田さんは、『こんな人間を公認した責任がある』と、土下座をして支援者に謝っていたんです。私はシンプルに政策上で違うことは意見を交わしたかった、やりたい政策を実現させたかっただけですが、多数決を盾にして全く聞き入れられず、次第にハシゴを外されていった。守口・維新の会にいても、市民のための政治はできないと判断して離党したんです」 ちなみに別の市議会関係者は、かつて西田府議より「ここで土下座ができないような奴は応援できへんからな」と、“土下座強要”をされた過去があるとも明かす。A氏はその後に結果的に維新の会を離党しているが、西田府議からは何の連絡もなかったという。 同じく、後援会を通して府議からパワハラを受けたと証言するのは、維新の会・守口支部に所属した元市議のB氏だ。B氏は、西田府議から露骨な選挙妨害も受けたというのだ。 「西田さんは、自分に従わない人間を徹底的に潰しにかかる。私も何度もパワハラを受けました。発端は、既に本部に提出していた寄付の支払い額を見せろと言われたことに反対したことです。また、同じ維新の仲間であるはずの西端勝樹市長（当時）が提案された、『持ち込みのゴミ処理の値上げに反対』という、西田さんと反対にあたる意見提案を私がした以降は、事あるごとに私の活動の妨害をされてきた。’19年の守口市議選挙の際も、6名の維新公認候補者がいるにもかかわらず、私たちをさして『2名は本当の仲間ではない』と平然と発言されたくらいです。更に選挙前の『維新プレス』では、新人候補4名は紹介しているのに、私達現職2名は一切紹介されていなかったんです。そんな経緯もあり’19年の選挙後の守口支部の役員会で提案意見を述べると、西田氏の後援会から『自分で決めるなら維新をやめろ』と強く罵倒されました。そもそも支部での市議会の議案判断の場なのに、自分の意見を通すために市民を交えるという感覚が理解できません。その後、『支部の決定に従わなかった』と離党勧告を本部に提出され、結果、離党させられたんです」 B氏は支部長である西田府議の言動について、党本部にも何度も抗議を重ねている。 「支部長としての西田さんの振る舞いがあまりにヒドいということで、党本部にも何度も意見書を提出したんです。さすがにマズイと思ったのか、横山英幸・現大阪市長は何度も守口まで出向きヒアリングをした上で、『西田さんの対応はさすがにマズイ』と仰っていただきました。別の幹部も、『一回離党してもまたしばらくしたら戻すから』と言っていました。ですが、結果戻ることもできずで、パワハラを確認しておきながら対応しなかった党本部の判断にも憤りを感じています」 はたして複数のパワハラ事案について、どう答えるのか。西田府議を直撃した。 ――複数の元市議や職員から、西田さんからパワハラを受けたという証言を得ています。 「全くない。誰がそんなことを言っているんですか。ビックリ！ビックリです」 ――A氏は、西田府議が西端市長（当時）の政策に対して、もしくは市議会の中で上がるものに対して「有無を言わさずに反対しろ」という圧力を受けた、と。 「全くないです。ビックリです。あまりにも偏っている。ビックリですよ」 ――前回の市議選挙の際に維新から出られたB氏からは、西田府議から「維新本部から公認は6人出ているけどあなた達（2人）は同じ維新のメンバーではない」というような発言があり、露骨な選挙での妨害を受けた、と証言を得ています。 「全くない。ビックリです」 ――B氏は守口支部にて、西田氏の後援会に所属する支部の役員から「あなたがたは維新の議員としての資格がない」「やめろ」と強い口調で高圧的な発言を受けたと。 「市政の方向性を決めるときに『今後しっかり支部で決まったことは従ってやっていきましょう』という話やったんですよ。すると、B氏は『僕は僕の想いで行動します』と言われたので、それは違うでしょって、いう話は出たと思います。あまりにも一方的な話です」 後日改めて西田事務所に質問書を送ったところ、B氏への発言について以下のような回答があった。 「’19年5月、維新の会守口市支部で役員会を行いました。2名だった維新の会所属議員は新人が4名当選し、合計6名となりました。大所帯となったことから、『これからは6名の皆さんで協議をして議案に対する賛否を諮ってください』と支部長である私から発言いたしました。すると、B氏から『僕は僕の判断で決めます』という発言がありました。以前、’13年に大阪維新の会府議団では、泉北高速鉄道の件で、府議団で意見が分かれたことがありました。結果、団で決まったことに造反した4名の府議は、その本会議直後、府議団を除名となりました。維新の会は、決まるまでは議論を徹底して交わす、しかし決まったことには一致団結するという考えが定着しています。先ほどの、B氏の発言を受け、守口市支部の役員（民間人）から、『自分の思いだけで決めるんやったら維新ちゃうやん。それやったら維新やめたらいいねん』との発言が確かにありました。それが今回の『維新やめろ』との発言かどうかは分かりませんが、再度申し上げますが、詳しい状況を教えてください」 また、維新の会の広報誌に2名の議員を掲載しなかったことについてはこう答えた。 「『4名のみの紹介の維新プレス』の件ですが、4名のみの紹介ではなく、4名の新人の公認候補予定者の新人特集号です。その4年後の’19年の選挙前に、現職の2名は既に、自身の市政報告を市内に配布しており、合わせて、新人が4名も出るということから、新人を支えなければとの思いはありましたが、何より、新人の皆さんからの希望があり発行しました。ですのでその発行費用も、それぞれの新人候補予定者が出しています」 なお、一連の西田府議のパワハラ疑惑について大阪維新の会本部にも質問書を送付したが、期日までに回答はなかった。 直撃取材の際には、「ビックリです」「全くないです」と繰り返した西田府議。しかし、西田府議の疑惑は党内や市職員へのパワハラだけに留まらなかった――。 後編記事『「犯罪歴のある人間との付き合い」怪文書がバラまかれ…大阪維新の会・衆院議員候補に「黒い交際」疑惑』では、西田氏だけでなく支援者にまつわる疑惑について追及する。