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仏で女性の服装巡り論争勃発

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Japan In-depth

【まとめ】

・オルセー、胸元開いた服を着た女性の入館拒否。 ・オルセーはツイッターで彼女に謝罪。 ・女性が好きな服を着る権利を守る必要あり。

9月9日、フランス、パリにあるオルセー美術館に、一人の女性が胸元が開いたワンピースを着て美術館に入ろうとしたところ、職員らから入場を拒否され、そのことが大きな物議を醸しています。 オルセー美術館の規則として「公をみだす服装」が禁止されていますが、女性の服装はその規則にそぐわなかったというのです。そのため、気温が高かったにもかかわらず上着を着なければ入場を認めないと女性職員二人に警告されました。 しかし、美術館に入ってみれば、確かに、彼女よりも細くて胸は小さいけれども、タンクトップ姿の女性がたくさんおり、自分だけが規則に反しているとは思えなかったそうです。そこでその日着ていた服装の写真と共にその日起こったことを詳細に書いてツイッターに投稿しました。 そうしたところ、この投稿は多くの人から支持を得て広く拡散。2万4千回リツーイトされ、4万1000件のいいね!が押され、オルセー美術館への批判が沸きおこり、最終的には、その日のうちにオルセー美術館がツイッターで彼女に謝罪するに至ったのです。 SNS上では、過去にも拒否された女性たちも名乗りをあげましたが、その女性たちと比べても明らかに今回の件は美術館に入るために適切な服装をしており、女性のふくよかな胸の谷間が見えることを「公をみだす服装」とするのには無理がありそうな状況でした。それでなくても、フランスは「女性の体に関してはその自由を尊重する国」としてきた歴史がある国です。

■ フランスで抑制されてきた女性の服装 フランスは長い間カトリックや家長制度の影響により、女性の服装は男性の目線で著しく制限されてきました。女性がみだらな服装をしていけないのはもちろんでしたが、1800年11月17日には、なんと「女性は公共の場でズボンをはいてはいけない」という条例が設定され、驚くことに、その条例は、(もちろん守られていませんでしたが)2013年1月31日に廃止になるまで存在していたのです。このように、フランスには、女性の服装が男性が作った規則で制限される時代があったのです。 だが、その規則も1960年代~1970年代のフェミニズム運動の結果、いろんな既成概念が打ち壊され、女性は開放されました。トップレスで浜辺で日光浴することが流行ったのも、自由になったことをおおいに満喫した結果の一つなのです。その勝ち取った自由を守るために、ムスリム女性の全身を覆った姿(特にベール)が非難の対象になったことも事実ですが、しかし、当時のフランスでは、それほど女性たち自身が自由に服装を選べる権利を守ることは必要なことでした。 ■ 時代により変わる風潮 しかし、最近になってその風潮に変化がみられてきています。海辺でトップレスになることをあまりよく思わない人も出てきたのです。先月には地中海に面したサントマリーラメールで、家族連れから苦情を受けた憲兵隊がトップレスで日光浴をしていたグループに服に着るよう求めたことが物議を呼びました。この件に関しては、ジェラルド・ダルマナン内相が、トップレスで日光浴する女性の権利を擁護する言葉が出ています。 しかし、実際の話、最近ではトップレスになる人は年々減少しています。2017年にIfopが実施した調査によると、トップレスで海岸にいるのは全年齢の女性の29%のみ。この割合は以外にもお隣の国スペインの49%、ドイツの41%、オランダ35%よりも大幅に低くなっています。さらに年齢が高い人にトップレスが多いようで、50歳以下に限定した調査ではその割合はさらに低くなり22%になります。1984年には、50歳以下の女性は43%がトップレスであったのに比べ、時代を追うごとに少なくなってきていることがわかります。 ■ 裸になることを避ける現代の若者 実際の話、現在のフランスの若者は、人前で裸になることがほとんどありません。筆者の娘にしても、スポーツクラブの後で汗を流すのに、クラブの女の子全員が水着を付けてシャワーを浴びます。人前で裸を見せることがないのです。 この海辺でトップレスなど裸になる習慣の衰退の理由として挙げられるのは、  1.SNSの普及でいつ写真をとられて拡散されるかわからない  2.自分の体に自信があるわけではないので、自分の体に対する批判の恐れ  3.執拗に見ている男性への恐怖 などがあげられます。 時代の流れとともに、写真どころか、いつ動画がとられているかわからない時代になりました。ましてや意図していない場面で、自分のトップレス姿が流れている状態は避けたいものです。 また、フランス女性の自分の体に対する自信は、他の国比べても低いものとなっています。前出のIfopの調査では、トップレスが多かったスペインでは自分の体の評価を10段階で6.6、ドイツでは6.5、オランダでは7.2のところ、フランスは6.3と、低い値となっています。そういった状況であるがため、そこまで体をさらしたいとは思っていない人が多いようです。 さらに男性の視線に対する恐怖というと、ある意味セクハラに繋がっていきますが、マクロン政権に入りハラスメントに対する規則が強化されてもなお、現在も女性を悩ましている問題の一つになっています。つい先日も、オペラ歌手クロエ・ブリオさんに、リハーサル・公演中に台本にもないのに彼女の股を開いて頭を突っ込出くるというセクハラをおこなったとし、ボリス・グラップ氏が訴えられたことが話題にのぼりました。その話が表に出てから、彼女の元には劇場関係者から、男性からセクハラを受けた経験があると毎日のようにメッセージが届いたといいます。 フランスでは以前、「レイプされたのは服装のせいではありません。」という活動が行われたこともあります。よく、暴行されるようなことがあると、気を付けなかった女性も悪い、誘うような服装をしていたのだなどと言われますが、この時集められた実際レイプにあった時の服装では、ジーンズにTシャツなど、どちらかというとシンプルな服装の方が多かったのです。このことからも決して服装が原因でレイプが行われるわけではないことがわかります。もともと、相手が女性だという理由で、罪を犯す加害者が悪いであって、それを女性の服装のせいにするのはもうやめるべきなのです。 ■ 大事なのは女性が自分の好きな服を着られる権利 例え、トップレスでいる習慣は薄れて保守的に時代が変わってきたとしても、女性が自分の好きな服を着る権利は今後も守り通していく必要があります。ある程度、場所にあわせてTPOは考えるべきだとは考えますが、男性の性的視線を元にした意見に支配されることなく、女性自身が、自分が着たいと思う洋服が着られることは大切なことです。ちょっと谷間が見えるだけで、否定されるなど言語道断。 そんな女性の権利を守るためにも、今回の女性の主張とオルセー美術館の謝罪は、当然のことだったのではないでしょうか。今後はこういうことが起こらないことを願うばかりです。 参考:Observatoire mondial de la nudite feminine(https://www.ifop.com/wp-content/uploads/2017/08/3827-1-study_file.pdf)

Ulala(ライター・ブロガー)

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