40歳超えたら要注意! 突然歯が割れる「破折」の原因と対策【専門家が監修】
遠い昔のむし歯治療で機能を失った歯に多発している破折は、抜歯を宣告されがちだが、自分の歯は一本でも失いたくないもの。希望がある限り取り戻す努力をすべき根拠がある。[取材協力・監修/長谷川晃嗣(長谷川歯科診療所院長、歯学博士、日本歯科理工学会理事、日本接着歯学会評議委員)] [写真]記事で紹介した内容をより詳しく
“死んだ歯”に起こりやすい歯根破折
かみにくい食材を強くかんだ瞬間、嫌な音がして歯に痛みが。あるいは就寝中にかみ締めをした翌日、食事どきに歯が壊れていることに気づく、などという恐ろしい体験をする中高年は少なくない。 このように歯が壊れる現象が破折(はせつ)。歯茎から上の部分に起これば歯冠破折、下なら歯根破折となる。歯冠には詰め物や金属を被せるなど保険適用の医療で治せるが、問題は歯茎内での歯根破折だ。 歯根破折は圧倒的に失活歯に起こるという。失活歯とはむし歯治療などで歯髄を抜去し(抜髄という)、菌に感染した歯根内部を削った、いわば死んだ歯。実はこの治療で微細な疵やひびが根管の内側に生じることがある。 食事などで力を受けるたびにこの疵、ひびは根管内から歯根表面へ少しずつ成長し、ある日遂に歯の表面に達する。かくして歯の表面に破折線が現れる。
差し歯が原因にもなり得る
疵、ひびとは無縁の根管治療を受けても、空洞になった歯根管内に金属の支柱を立て、その上に人工の歯冠を乗せてもらっている人は多いだろう。いわゆる差し歯だ。実はこの治療もリスクなのだ。 歯には金属と異なり、しなやかさがある。歯応えのある食材をかめば、たわむことで力を受け流す。そもそも歯は歯槽骨に直接固定されているのではなく、歯根膜という靱帯にぶら下がる要領で歯槽骨につながっているから、押されればかすかに凹み、これによっても過剰な力を解放できる。 だが、金属の支柱を通すと、その部分だけはしなわない。結果的に支柱の上下の端に接する部分に力が集中し、そこに破折線を生じやすい。 破折線ができると、そこから唾液と口腔内細菌が毛細管現象で流れ込み、歯根周囲に侵入して感染、炎症を生じ、患部は腫れ上がる。 あわてて歯科に駆け込むと、歯根破折と診断され、多くの場合抜歯を提案されることになる。もしもここで抜歯に同意すると、ブリッジやインプラントなどで失った歯を補うしかなくなるが、実はこれは考えどころだ。