“MT専用”の実力は本物だ! ホンダ「シビックRS」はシフトチェンジが最高に楽しい一台。
スムーズなシフトチェンジができるレブマッチ
試乗コースである伊豆サイクルスポーツセンターの周回路(1周5km)は、アップダウンと大小のコーナーが連続するワインディングで、MTモデルを試すのにはぴったりのコースだ。 さっそく3速まで加速して最初のコーナーに入るところでブレーキングしながらクラッチを切ると、その瞬間に「ブオンッ」とエンジン回転が上がり、1段落としてクラッチを繋ぐシフトダウンがとてもスムーズに行えたことに気がつく。まさに上級者が行うヒール&トゥ(右足でブレーキペダルを踏みながら、かかとでアクセルペダルをポンっと踏んで回転合わせをする)の自動版だ。シフトがスポスポと入るので、とても楽しいMT走行が楽しめる。比較のために乗った現行MTモデルで同じ場所でシフトダウンをやってみると、エンジンの回転合わせがうまくできないため、ギクシャク感が出てしまった。 「スポーツモード」が新たに設定されたので迷わずそれに入れて走ると、車高が5mm下がった専用の足回りによる接地感があって、姿勢変化が少ないコーナリング、それに合わせてスパッと決まるステアリングの反応、右足のアクセルペダルに敏感に反応するエンジン(軽量フライホイールによるものだ)、車速がコントロールしやすい大径ブレーキなど、RSの良さがだんだんとわかるようになってきて、いうことなし。そして、現行MTモデルとの差がかなりあることに気がつくのだ。
“RS=ロードセーリング”の意味が50年前とは変わった?
シビックRSといえば、初代シビックのスポーツモデルであったRSを思い出す方も多いはず。その時のRSとは「ロードセーリング」の頭文字だった。今回シビックに復活したRSの意味をシビックシリーズの開発責任者である四輪開発センターの明本 禧洙(あきもと よしあき)氏に聞いてみると、「試乗前の説明会の時、私はロードセーリングという言葉は使いませんでしたね。というのは、出力が50馬力程度だった50年前のシビックの時代は、ハイウェイを悠々と走りたいという目的のために排気量や馬力を上げて、というのがRS(=ロードセーリング)の意味だったのです。しかし現代では、ハイウェイを120km/hで悠々と走るのは軽のN-BOXでも簡単にできることです。というわけで、RSの定義づけをそろそろ考え直すべきかな、と思っているのです。ただ、走る喜びを追求したモデルであることは共通しているので、50年を迎えるシビックRSということで命名したのです」と説明してくれた。 RSのターゲットユーザーは20~30代のクルマ好きミレニアル世代。タイプRが買えなかったMT好きをきっちりと取り込みたいという意図もあるだろう。大きなウイングタイプのテールゲートスポイラー(裏側に刻んだギザギザによって、日常の速度域でも効果が感じられるという)をオプション装着したモデルも展示されていて、そうしたユーザーにもアピールできるはず。スポーツ度が上がったので、ジャンルは違うけれども86/BRZやロードスターをライバルと考えても良いかもしれない。気になる価格は試乗時点では未発表だった。
文と写真=原アキラ