老舗酒蔵が開発、ノンアルのバナナジュース人気 天保元年創業「旭鶴」(佐倉市) 自家製米こうじの甘酒使用、発酵技術活用し健康寄与 きっかけはクローン病
佐倉市の老舗蔵元「旭鶴」が初めて作ったノンアルコール飲料「酒蔵がつくったバナナジュース」が、じわりと人気を広げている。健康に良いバナナと自家製米こうじ甘酒を使ったジュースは、販売を始めて約1年で4万本以上売れる好調ぶり。開発のきっかけは、蔵元の長男で取締役の田中源太郎さん(34)が消化管に炎症が起きる国指定難病の「クローン病」を発症したことだった。田中さんは「アルコールにこだわらず、酒蔵として発酵技術を活用しながら健康に寄与できれば」と話している。 旭鶴は1830(天保元)年に創業。200年近い歴史の中で、初めてノンアルコール飲料の開発に着手した。 田中さんが2016年に発症したクローン病は、消化管に炎症や潰瘍が起きる原因不明の病気で、腹痛や下痢といった症状が出る。根本的な治療法は確立されていないため、食事による消化管への刺激を抑えながら長期的に病気と付き合っていくことが必要となる。 田中さんもイカやタコ、海藻類、硬い肉など消化しづらい食材、ラーメンなどの脂っこい食材は一切食べられなくなった。体重は3カ月ほどで16キロ減少。病気を機に食事や健康に向き合うようになると、徐々に「慢性的におなかの悩みを抱える人は多い。酒蔵の発酵技術を使って力になれないか」という気持ちが高まっていった。 当初は「お酒を造らないと」と無意識に考えていたが、妻の友美子さん(30)に「お酒じゃなくてもいいんじゃない」と言われ、初のノンアル作りに着手。食物繊維が豊富で腸内環境改善にも役立つバナナと、ビタミンB群、アミノ酸などを含み「飲む点滴」と言われるほど栄養価が高い甘酒に目を付けた。 こだわったのはバナナ、甘酒、ヨーグルト、牛乳というシンプルな材料で自然な甘みを出すこと。米こうじから作る旭鶴特製のこうじ甘酒は癖が少なく、飲みやすい味に仕上がった。飲み応えも抜群で田中さんは「朝食にもぴったり」と太鼓判を押す。 企画時点では1日10本の売り上げを見込んでいたが、友美子さんが発案した専用自販機で売るというアイデアも受け、昨年4月の販売開始以降は1日平均40~50本ほど売れるように。「おいしい」と好評で「もっと自販機を置いてほしい」という声も上がっている。田中さんは「小さな子どもから高齢者まで買ってくれた。日本酒購入層とは異なる人たちにも浸透している」と喜ぶ。今後、設置箇所も順次増やしていきたい考えだ。 国内消費量が減少傾向にある日本酒。「健康を意識する人が増えたと思う。自分も大きな病気をしたからその気持ちがよく分かる。時代に合わせて酒蔵も変わっていければ」と田中さん。日本酒以外の発酵食品や発酵技術を使った化粧品などの開発も検討しており「今後もアルコールにこだわらず発酵技術を使って社会の役に立ちたい。そこに酒蔵としての存在意義があると思う」と見据えた。 バナナジュースは1本300円。旭鶴直売所前、京成佐倉駅南口など県内9カ所の自販機のほか、オンラインショップでも販売中。詳細は旭鶴ホームページから。