2021年スーパーボウル、CMで株を上げているブランド、下げているブランド
意味深長になるのもダサい。かといってただ面白おかしいのはもっとダサい。「よりよい社会」への移行期間に、今伝えるべきメッセージを企業が発信する傾向が目立っているスーパーボウルCM。広告には人と社会を繋げる責務があると再認識させてくれるベスト5、そして全く世情が読めていない今流行のtone-deafなワーストをピックアップ。
【Best】 バドワイザー
クライズデール(馬)を主人公にしたストーリーでスーパーボウルCMのベストに選ばれることも多かったバドワイザーが37年ぶりに試合放送中のCMを流さないことを決定。コロナ禍で7%近く利益が減ったうえ、株価も下落したから? と思いきや、代わりにワクチン接種の啓蒙ビデオを放送することに。そのうえ広告料の一部を寄付したり、1月25日~2月7日の間にサイトで登録した人に無料でビールを配るキャンペーンまで……。多くの企業がモノが売れない時代になんとか買わせるべくテレビ広告を流す中、短期的利益より長期的ブランディングをとった「パーパス・ドリブン(本質的な企業の存在意義を目的とすること)」なアイデアだと称賛の声が多い。 商品訴求は親会社の企業広告と、同社の他ブランド広告、そしてデジタル広告を打つことでカバー。ナレーターを務めるのは、ラシダ・ジョーンズ。人選も気が利いている。
【Best】ロジテック
リル・ナズ・Xがナレーションを務めるのは、テック企業のロジテック。カムアウトしたLGBTsとして初めてビルボードチャートNo.1に輝いたアイコンを起用し、「ゲーム・チェンジャー(従来の規範を変えた人たち)」を鼓舞する内容は、Z世代に向けたマーケティングとして優れているだけでなく、あまり捻りすぎないストレートな意見広告としても評判を上げている。
【Best】トヨタ US
昨年BLMの時期にデモへの嫌がらせをする白人層のニュースが流れた際、複数のヘイターがレクサスに乗車していたことでブランドイメージが少なからず損なわれ、お気の毒としか言いようのない米国トヨタ。それを払拭するかのようなスーパーボウルCMがこちら。製作費が相当かかっていると思われる今回のCMの主役は、日本でも有名なパラ・アスリート、ジェシカ・ロング。両足の膝下を失い、ロシアの児童養護施設から米国の両親に引き取られて水泳選手として活躍するまでの彼女の半生を60秒の幻想的な映像にまとめ、スポーツの祭典にふさわしいエンパワーメント広告に仕上げた。