70年ぶり国内感染の「デング熱」とは どう感染が広がった?
約70年ぶりに国内感染が発生した「デング熱」。感染者は増え続け、東京の代々木公園や新宿御苑が閉鎖されるなど波紋を広げています。デング熱とはどのようなもので、なぜ国内で感染が広がったのでしょうか。
■どんな症状?
「デング熱の症状は、発疹、悪心・嘔吐、骨関節痛・筋肉痛などで、その痛みはかなり激しく、流行地では「break-bone fever(骨砕き熱)」とも言われるほどです。あまりの痛みのため、デング後うつ病という状態になることもあります。その意味では、デング熱が風邪やインフルエンザと同様のものだと考えて、症状を軽く考えるのは危険といえます」 こう言うのは国立感染症研究所ウイルス第一部第2室の高崎智彦室長です。8月26日、戦後初めてデング熱患者の国内発生が確認されました。これまでもデング熱は海外の流行地で感染し帰国した症例が毎年200名前後報告されていて、今年に入ってもデング熱の輸入症例は8月15日現在で98症例ありました。しかし、国内で感染した症例は戦後ありませんでした。
■どのように広がった?
「感染経路はまだ解明できていませんが、海外からヒトによって持ち込まれた可能性が高い。デング熱の潜伏期間は1週間近くありますので、自覚症状のない感染者が入国して、その患者の血を蚊が吸い感染蚊となって、他者に広めた可能性が考えられます」 デング熱は蚊媒介性のウイルス感染症です。日本には日本脳炎という蚊媒介性の感染症がありますが、予防接種も行われていることから、平成4年以降の報告患者は年間10名以下となっています。このため、蚊が媒介する感染症への警戒心が低下している懸念も指摘されていました。 「デング熱を媒介する蚊は、ネッタイシマカとヒトスジシマカで、ヒトスジシマカは東北地方以南に生息し、夏季には活発に活動しています。また、ヒトスジシマカは待ち伏せ型で、群集してひそんでいるところに近づく動物(ヒトを好む)に多く襲いかかります。さらに、ヒトスジシマカが卵を生むのは池など広い水辺ではなく、雨水枡(うすいます)くらいのサイズの水たまりです。ですから、ヒトスジシマカの繁殖を抑えるには、地域で協力して古タイヤや植木鉢の皿の水たまりを捨てるということなど各自でできる対策はあります」