現役選手&OBらが語り尽くす 令和のNo.1「ホームランアーティスト」を決めよう!!
令和のNo.1「ホームランアーティスト」
豪快なスイングから放たれた白球がスタンドに吸い込まれるその時、球場は一瞬、無音となり、割れんばかりの歓声がその静寂をかき消す。バッテリーはガックリと肩を落とし、打者は悠々とダイヤモンドを一周する――。 【画像】プロ野球の醍醐味と言えば……「ホームランアーティスト」がズラリ…!(写真8枚) 白熱する投手戦も魅力的だが、プロ野球の醍醐味と言えばやはりホームランだろう。1936年に大阪タイガースの藤井勇が第1号を放ってから今日に至るまで、日本プロ野球では約11万本のアーチが球場の空を彩ってきた。 王貞治、野村克也、田淵幸一、落合博満らレジェンドが美しいアーチを架けた昭和、そして海を渡ったゴジラ・松井秀喜が看板直撃弾を連発した平成。それぞれの時代に、伝説的なスラッガーがいる。 では、投高打低が進む現在の日本野球界で、最も美しい本塁打を放つバッターは誰なのか? FRIDAYは今回、現役選手やOB、監督経験者を取材し、令和のNo.1「ホームランアーティスト」を決定した。 口火を切るのは、今シーズン楽天で監督を務めた今江敏晃氏だ。 「日本ハムの万波中正(24)のホームランは凄まじい。192㎝、99㎏の恵まれた体格から放たれた打球は低弾道で、スタンドに一直線に突き刺さるようなイメージです。打撃に少しムラはあるものの、ツボにハマッた時の飛距離は球界屈指。長打を狙いにいけば、まだまだホームランを量産できそうですが、場面によってはコンパクトな打撃をすることもできる選手で、これからさらに大化けする可能性を秘めています」 ’21年オフの新庄剛志監督就任とともに覚醒した万波の打撃に、ライバル球団の選手も舌を巻く。 「’23年8月12日のソフトバンク戦で打ったホームランが忘れられない。相手投手は巨人に移籍した高橋礼(29)。彼のアンダースローは球速もあって打ちにくいのですが、パワーで持っていった。後で聞いたら、打球速度は180㎞/h近く、135mも飛んでいたらしい。しかも低弾道で……。万波、ヤバいです(笑)。西武の中村さん(剛也・41)みたいにバットに″乗せて打つ″タイプのホームランバッターもいるけど、万波はパワーで衝突させて持っていく、天性のパワーヒッターですね」(パ・リーグ球団外野手のA氏) パの若手ナンバーワン長距離打者は万波にほぼ決まったが、ベテラン陣も黙ってはいない。 「山川穂高(ソフトバンク・33)のホームランは、ほとんどが外野スタンド中段以上の印象。2アウトランナーなしの中盤にホームランを打たれ、流れが変わって逆転負けを喫したこともありました。バッテリーが最も警戒している場面で長打が出る野球勘と技術が素晴らしいと思います。 柳田悠岐(36)も素晴らしい打者です。ライトスタンドへの特大ホームランも印象的ですが、むしろセンターから反対方向への飛距離や打球の強さが本当の魅力だと思います。試合前の練習で、打撃投手が投じた緩いボールを、当たり前のようにレフトスタンドに何度も運んでいるのを見た時は驚きました」(前出・今江氏) ソフトバンクには、未来のホームランアーティストも目白押しだ。 「ギータもスゴいが、リチャード(25)にも大きな可能性を感じます。ファームで5回も本塁打王になっている。スイングスピードもパワーも、NPBトップクラスです。一軍に行くと詰まるのを怖がってバッティングが小さくなるのを克服すれば、40本打てる。笹川(吉康・22)にも期待してほしい。左打ちだし、背格好もギータそっくりで、ギータ本人も『アイツはメチャクチャ飛ばす』と認めるほどですから」(ソフトバンク球団関係者のB氏) 打者としての完成度で言えば、平成の時代から本塁打を量産してきた山川や柳田が万波を上回る。しかし、今後の伸びしろを考えれば、リチャードや笹川、万波がパ・リーグの顔となる時代が来るかもしれない。 ◆伸びて伸びて、落ちてこない セ・リーグに目を移そう。「衝突型パワーヒッター」の万波に対し、「乗せて運ぶ長距離砲」として名前が挙がったのは、巨人の岡本和真(28)だ。プロ野球解説者の得津高宏氏が話す。 「岡本は、リラックスしながらスイングしてボールに回転をかけ、大きなフォロースルーで打球を後押しするのが上手い。落合博満さんに通ずる打ち方ですね。力(りき)みがないから率も残せるし、ボールを見る時間が長いので逆方向にも打てる。阪神の佐藤輝明(25)や大山悠輔(29)も、引っ張り方向の打球は素晴らしいのですが、逆方向へのバッティングに課題が残ります。現時点では、岡本に軍配が上がるでしょう」 セ・リーグ球団内野手のC氏は、岡本が9月15日の中日戦に放ったレフトスタンド看板直撃の23号ソロを「今年の一本」に挙げる。 「たしかに、抜けて真ん中に入った藤嶋(健人・26)のスプリットは甘かった。でも、試合が3対3で拮抗していた6回、先頭の岡本にあそこまで見事に打たれると、笑うしかないですよね。130mくらい飛んでたんじゃないかな。岡本のホームランて、″綺麗″なんですよ。たしかに飛ぶ時はメチャクチャ飛ぶんですけど、弾道が高くて、スタンドに突き刺さるというよりは降ってくるホームランが多い。滞空時間の長い、ファンがワクワクするような打球なんです」 この岡本の大飛球を、ライトから見送った中日の細川成也(26)も、令和のホームランアーティストに名乗りを上げる。 「細川はとにかく打球が速い。今年の4月25日に巨人の菅野智之(35)から放った4号の打球速度は、なんと185㎞/hを記録しました。大谷翔平(30)が放ったポストシーズン第2号の打球速度が約187㎞/h。細川は大谷に比肩するほどの打球速度を誇ります。綺麗なアーチを好むなら岡本、弾丸ライナーの超パワー型ホームランを好むなら細川でしょうね」(前出・得津氏) 今季の中日は、細川が積み上げた23本のホームランも虚(むな)しく、最下位に沈んだ。しかし、ファームにとてつもないスラッガー候補がいるのだという。 「鵜飼航丞(うかいこうすけ)(25)には期待が持てます。数年前、フェニックスリーグで彼の打撃を初めて見たのですが、打撃練習で誰よりも強く、速い打球を飛ばしていた。パワーや飛距離だけなら、一軍でもトップレベルです」(前出・今江氏) 鵜飼のプロ通算本塁打はわずか7本だが、キッカケをつかめば本塁打ランキングに名を連ねるポテンシャルを持つ。 万波、山川、柳田、岡本、細川、そして次世代の大砲たち――。強打者がひしめくNPBの中で、現役選手やOBが選んだ「最も美しいホームランを放つバッター」は、やはりこの男だった。 「ヤクルトのムネ(村上宗隆・24)でしょ。岡本のホームランは綺麗に舞い上がって、スタンドに落ちてくるアーチ型が多いけど、ムネの打球は綺麗に舞い上がって、伸びて伸びて、落ちてこないんですよ。滞空時間が長いうえに、よく飛ぶ。お金を取れる打球って、こういうことなんだろうなと感心しながら見ています」(在京球団の野手D氏) 今季、世界最長弾を放ったのは、大谷でもなければ、MLB1位の146.3mを記録したマーリンズのヘスス・サンチェス(27)でもない。9月14日の巨人戦、6回表に推定155m弾を放った村上である。 「(東京)ドームの天井スレスレにとてつもない勢いで上がって行って、そのまま落ちることなくライトの壁の照明のところにブチ当てた。しかも、まだ伸びてましたからね。ドームって看板に当てると賞金として100万円が貰えるんですけど、ムネは試合後、『飛ばし過ぎて看板に当てられなかった。100万円欲しかった……』なんて嘆いてました。コイツは化け物かと思いました……(笑)」(在京球団内野手のE氏) 令和の三冠王が、令和No.1「ホームランアーティスト」の称号をも獲得した。しかし、上位にランクインした岡本と村上は来年オフのメジャー挑戦が濃厚。次なるNPB最高のホームランアーティストは、万波か、細川か、はたまた――。 『FRIDAY』2024年12月27日号より
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