<甲子園交流試合・2020センバツ32校>第5日 第2試合 帯広農-健大高崎 みどころ
◆第5日 第2試合 帯広農-健大高崎 8月16日 12:40 ◇みどころ チーム打率4割4厘の帯広農の強力打線が、左右の好投手を擁する健大高崎を崩せるかがポイントだ。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 帯広農は昨秋、巧打の千葉俊輔、俊足の井村塁らが出塁し、長打力のある水上流暢らが還すなど打線のつながりが良かった。前田康晴監督が「秋のような勢いを出して臨みたい」と話すように、打ち出したら止まらない打線の再現で勝機を見いだしたい。投手陣も、粘りが持ち味の井村、制球力のある千葉、安定感のある水上と、この3人の右腕がキーマン。継投で相手打線を抑えたいところだ。 健大高崎は昨秋、群馬県大会3位から関東の頂点に立つなど、こちらも勢いに乗った時の強さがあり、同時に接戦の強さも見せてきた。エース左腕・下慎之介、大型右腕・橋本拳汰は140キロ以上を投げる。青柳博文監督は「バッテリー次第の戦いになりそう」と話し、主将の捕手・戸丸秦吾のリードを含めた守りで、まずは主導権を握りたい考えだ。秋は13試合で23盗塁。目立つ数字ではないが、走塁で相手に重圧をかける代名詞「機動破壊」の戦い方に加え、徹底したバント攻撃、一発長打など、多彩な攻撃も仕掛けられる。【藤井朋子】 ◆帯広農 北海道・道立 全国大会出場回数 春1回/夏1回 ◇敗戦の雪辱、初舞台で 「リベンジだ」。7月のオンライン抽選会で対戦相手が決まった瞬間、エースで主将を務める井村塁(3年)の脳裏を、あの敗戦がよぎった。 昨年8月3日、地元であった健大高崎との練習試合に先発した井村は5回を投げて8失点(自責点5)。6―11で敗れた。以来、坂道ダッシュを繰り返して下半身を強化し、「球速は上がっている」と雪辱に燃える。この1年でチームも進化した。昨秋の道大会で1926年の創部以来初の4強入りを果たし、21世紀枠でセンバツ初切符を手にした。 武器は、秋季十勝地区大会を含めて6試合連続2桁安打を記録するなど、チーム打率4割以上を誇る強力打線だ。軸はチームトップの打率6割6分7厘をマークした水上流暢(3年)。全53打点のうち19打点を挙げた右打者は勝負強さが光る。 投手陣は、粘り強い投球が持ち味の井村と、遊撃手の千葉俊輔(3年)、さらに外野手の水上の右腕3人が柱になる。千葉は「甘いところに投げれば打たれる相手。厳しいところを攻め、打たせて取るピッチングをしたい」と意気込む。 農業実習があり練習時間が限られるため、各選手がノートに目標や反省点を記し、目的意識を持って自主練習をしてきた。21世紀枠の選考でも評価された困難を強みに変える姿勢は、新型コロナウイルスによる自粛生活でも生きた。学校の牛から搾った牛乳と農場で取れる大豆などを混ぜた通称「パワードリンク」も農業高校ならでは。良質なたんぱく質を取り、体を作る。 甲子園は82年の夏に初戦敗退して以来。井村は言う。「学校にとっても特別な大会」。学校創立100周年の節目を、甲子園初勝利で飾りたい。【菊地美彩】 ◇沿革 1920年に十勝農業学校として創立され、57年に現校名となった。野球部は26年創部。甲子園には82年夏に初出場した。卒業生に自転車マウンテンバイクで北京五輪から4大会連続代表の山本幸平選手ら。2019年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」に登場した高校のモデルとなった。北海道帯広市。 ◆健大高崎 群馬県・私立 全国大会出場回数 春4回/夏3回 ◇楽しむ野球、観衆魅了 転機は昨秋の県大会、前橋育英との準決勝だった。序盤に先制を許し、打線はわずか3安打と沈黙。0―5で完敗した。それ以来、「試合を楽しむ」ことを心がけると結果が付いてきた。県3位で出場した関東大会は、1回戦で常総学院(茨城)に土壇場の九回に逆転して勝利し、勢いに乗った。準決勝で東海大相模(神奈川)を破るなどして優勝し、明治神宮大会も準優勝。待ちに待った甲子園での試合に主将の戸丸秦吾(3年)は「群馬の代表としてプライドを持って戦いたい」と意気込む。 見る人を魅了する「スペクタクルベースボール」を掲げ、安定した投手力、機動力を絡めた多彩な攻撃が強みだ。 エース左腕・下慎之介(3年)は最速143キロの直球に決め球のスライダーで高い奪三振率を誇る。カーブやチェンジアップも操り、関東大会と明治神宮大会で計4完投とスタミナも十分。戸丸とは中学時代からバッテリーを組み、「自分の力を引き上げてくれたのは、戸丸のおかげ」と信頼を寄せる。191センチの長身右腕・橋本拳汰(3年)は関東大会決勝で山梨学院を完封した。 打線はチーム打率2割8分8厘と高くはないが、走塁で相手に重圧をかけるチームカラーは健在。俊足の戸沢昂平(3年)、明治神宮大会1回戦の倉敷商(岡山)戦で満塁本塁打を放った山本遼哉(3年)らが多彩な攻めを展開する。 センバツ交流試合の開催が決まり、「新たな目標ができた。気持ちの入りようが違う」と気を引き締める戸丸は「(3年生は)日本で一番野球を楽しめる代。感謝の気持ちを持って、見る者を楽しませる野球をしたい」と試合を心待ちにしている。【川地隆史】 ◇沿革 1968年に群馬女子短大付高として開校、2001年に現校名に変更し、共学となった。野球部は01年に同好会として発足した。甲子園では12年春の4強が最高成績。夏は14年に8強入りした。OBに三ツ間卓也投手(中日)ら。陸上部は90年に全国高校女子駅伝で優勝。群馬県高崎市。 ……………………………………………………………………………………………………… ※出場回数は今春のセンバツを含む ……………………………………………………………………………………………………… ◆お知らせ 2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われます。日程は10~12日、15~17日の計6日間(予備日あり)。中止となった今春のセンバツ出場32校が招待され、各1試合を戦います。試合はNHKなどがテレビで生中継し、毎日新聞ニュースサイトなどが運営する「センバツLIVE!」でもライブ配信します。=随時掲載