組織にエゴイズムが蔓延しないように、トップが意識して行うべきあることとは?
時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。 前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。 【この記事の画像を見る】 ● 創業期は、トップの「個人的な」能力に頼って 成長を果たすのが当たり前 創業時には、事業が軌道に乗るまでの間は、現金が家賃や人件費、雑費などの形で、日々どんどん消えていきます。特に、信用力のない起業時には、手元の資金がなくなった時に一瞬でアウトとなるリスクにもさらされています。 よって、起業家たちは皆、本当に事業が軌道に乗ったと思えるその日まで、常に危機意識を持ち、夜は遅くまで仕事。朝は日の出前に目を覚まし、寝ている間も多くの課題を考え続けるくらいの、きれいごとなど言っていられない日々を過ごします。 それゆえ事業の初期は、トップの決めたことは絶対であり、指示の通り、意向に沿って忠実に動き、結果の実態をゆがめずにそのまま報告することが求められます。必然的に「独裁政権」「恐怖政治」の色を、大なり小なり帯びることは避けられないものです。 ただし、このマネジメントスタイルが続くと、後述する健全な企業文化を保つ努力がない限り、自身の評価が下がることを恐れるマネジャーが報告内容を偏らせることもあり、このトップダウン式の組織運営の機能不全が進む危険が伴います。 東証マザーズや東証一部上場を果たした際、創業者が涙することが多いのは、それまでの大変な思いの末に到達した今のステージの価値、意義を理屈ではなく心で受け止めるからなのでしょう。 資金力に乏しいスタートアップの段階は、ちょっとした舵取りのミスが、致命的な事態を招きかねません。 創業者自身が事業を一番理解しているわけですから、舵取りや重要な判断を「丸投げ」して任せることなど、とても恐ろしくてできる話ではありません。 本来は、筋の良い若い社員に任せたいとは思っていても、それよりも自分の持っている成功パターンに当てはめたほうが、安全性が高く確実です。 したがって初期の段階では、基本的に事業についての意思決定を行うトップの「個人的な」能力に頼って成長を果たすことになります。 この段階ではトップを中心に、トップをいろいろな形で支えるように組織は動き、トップ自身を中心にして最高のパフォーマンスを果たせる状態が作られていきます。