東京下町のうまい「町寿司」ベスト6軒 《高コスパ・ソロ活OK》…浅草・小岩・北千住で覆面大調査
ガラガラっと戸を開けたときに、すっと馴染めそうな寿司が好きだ。カウンターに腰を落ち着けて「さて、今日はなにをつまもうか」という瞬間を気負いなく愉しめる空気感。 【表】5大チェーンの「とんかつ」の新事実…!衣をはがして徹底調査 ついでに言えば、店構えもお客もこなれた感じ。街場で続いているいい店にはそんな雰囲気がある。気軽につまむが仕事はしっかりされている。そう、コレコレっていう旨さに会いに行く。
娘が継いだ「寿司職人の父の味」
まず訪れたのは浅草、食通街にある『江戸前三松』だ。倒れる直前まで現役だった先代が立つこと約55年。現在は娘の奥隅由規子さんが跡を継ぐ。ご店主が大事にしていることを尋ねると返ってきた答えは"うちらしさ"だ。 「小さいころから父の味で育ってるから。お店が玄関で、お客様との雰囲気も知っている。父のスピリットを受け継ぐのは自分しかいないと思ったのでね」 そこで先代から変わらぬウリは「光りもの」と「穴子」だ。酸味が勝ちすぎずまろやかでさっぱりした小肌が旨い。ふわっとした穴子は、ツメもいい甘味を感じる塩もいい。 次は西浅草の『貴乃』である。落ち着いた店構えで、白木の一枚板のカウンター。鯔背がコンセプトという店主が握る姿のリズム感もいい。「ちょいとつまむ」ような感覚で気軽に食べてもらいたいという寿司は、小ぶりで端正。 少し硬めに炊かれたシャリが口でほどよくバラける感じ。気軽とは言ったが、しっかり江戸前の仕事をされているところも味わいたい。ほどよく馴れた白身の塩梅や、煮ハマグリなや煮アワビの食感、ほどける穴子……。カウンター越しに会話も楽しみながらそんな寿司をっていうのがいい。
地元に愛される「高コスパの寿司屋」
最後は千束通りの『ジャパニーズ・ダイニング きんたろう』だ。「金太楼」といえば浅草でも数店あるが、もとは創業大正13年。江戸前の技術を伝承した寿司には定評がある。そこをもってここのよさは、なかでもひと味違うコンセプト。つまみも充実して、寿司屋にしては居酒屋使いもできるちょっとカジュアルな感覚。「名物ばくだん」や「賀茂茄子揚げ出し」など、壁に貼られたメニューがいっぱいを誘う。 新宿から総武線に揺られること約25分。新小岩に到着した。駅前のルミエール商店街を抜け『鮨二代目太郎』へと急ぐ。 商店街のはずれにある小さな店のカンターには40代~50代の常連さんがズラリ。しかもみんなご夫婦で来店している。それだけ地元に愛されている居心地のいい店だとわかる。 コースを楽しむ人、握り中心に楽しむ人は半々くらい。最初は色々食べられるコースがおすすめ。「最後まで食べられない方も」というほど品数は多く、しかもコスパが抜群。ただし「採算度外視なのでお酒もお願いします」とのこと。 日を改めて足を運んだのが川向うの小岩駅。1899年に駅ができた当時から栄えている街は、いまだ昭和の雰囲気が残る。 いくつか寿司屋さんを見て回るも年配の方が酒を飲み、握りを食べているほか、カウンターには女性のひとり客も。みんなすごく楽しそう。 接待から家族連れまでさまざまな人が来るとあって、シャリは米酢で穏やかな酢加減にという、街の寿司屋さんの心遣いがうれしい。とはいえヅケあり、昆布〆ありとさまざまに仕事を施して寿司を楽しませてくれるこだわりも。 本誌の街歩き企画、覆面調査隊で北千住担当になってから、千住地域の魅力に取りつかれている私、ライターの赤谷。今回の浅草・小岩の町寿司企画に加えて、千住鮨の食べ歩きの成果を編集の武内と振り返るウラトークをまとめた。