水が飲めない子どもが増えている衝撃「味がしないから苦手」クラスに2、3人もいる
2つ目は熱中症の増加です。近年、夏の熱さが厳しくなっています。文部科学省も熱中症防止のために、塩分を含んだスポーツドリンクや経口補水液を飲んだほうがいいというガイドラインを出しています。こうした風潮から、子どもたちの間でも「水は飲まないほうがいい」という空気があるようです。とはいえ、スポーツドリンクには大量の糖分が入っています。あまり飲みすぎると肥満の原因にもなりかねません。健康を考えたうえでも、ふだんからこまめに水をとる習慣をつけることが大切です。
■水道水は不安?日本の水質基準は厳しい ── 水が嫌いな子どもに対し、水を飲む習慣をつけさせるにはどうしたらいいでしょうか? 橋本さん:まずは、家庭の習慣としてみんなで水を飲むことが一番有効です。親が食事中に晩酌をしたり、甘い飲み物を飲んだりしているのに、子どもにだけ水を飲ませようとしてもムリな話です。だから、家庭全体で時間をかけ、水を飲むことに慣れていくのが大事です。学校でも意識的に水を飲ませるようにしたケースがあります。サマースクールや遠足などの行事で、水だけを飲ませるようにしたところ、水が苦手だった子どもも次第に飲めるようになったというのです。
飲み物も食事と一緒で、濃い味に慣れていると、薄味のものが物たりなく感じがちです。でも、意識して水を飲む機会を増やすうちに、飲めるようになっていきます。 ── 子どもに水道水を飲ませても問題ないでしょうか? 橋本さん:私は問題ないと考えています。日本の水道法では51項目の水質基準項目が定められています。これは水の汚染の指標であり、消毒効果を知る指標です。とても厳しく管理されているため、日本は直接蛇口から水が飲める、比較的少ない国のひとつです。世界では4人にひとりにあたる、約22億人が安全に管理された飲み水を飲めないというデータもあります。私は以前、インフラ整備の調査のためエチオピアで水汲みを経験したことがあったのですが、水源地に行くまでに山を越え、片道3時間かかりました。水源地に到着したら1時間ほど休憩し、20キログラムほどの重い水を背負い、また3時間かけて帰ってくるんです。水を手に入れるため、非常に過酷な作業を強いられていました。