ANAが販売する“新しいキャンプ”とは? 苦境の航空業界を救えるのか
ANAグループのANAセールスが企画した「そらキャン~ANA CAMP PACK~沖縄版」「ANA BEACH GLAMPING in 沖縄『伊江島』」にマンガ家・コラムニストの辛酸なめ子さんが参加した。空旅とキャンプを組み合わせた魅力とは? Vol.2では沖縄初日をリポートする。 【写真を見る】ANAが企画した“そらキャン”の詳細(21枚)
黄色のカマロでパワースポットへ
沖縄に到着した瞬間、今年の夏がまたやり直せるような気温に包まれ、旅行気分が高まりました。暑すぎず涼しすぎず10月の沖縄は適温です。プレミアムレンタカーサービスのお店「GRACE OKINAWA」で借りた黄色いシボレー「カマロ」に乗って名護市方面に向かいます。 木立の中を走り抜け、遠くには青い海が見えてきました。沖縄の原色の花によく似合うワイルド感のあるカマロにテンションが高まります。今回の旅はANAトラベラーズが先月発売した沖縄の手軽なキャンプ商品「そらキャン~ANA CAMP PACK~」を利用させていただきます。 目的地の東村字慶佐次の又吉コーヒー園に行くまではまだ少し時間に余裕があったので、途中のパワースポット「轟の滝」に寄りました。クルマでのアクセスも良く、轟の滝公園の駐車場に停めると1分ほど歩いてすぐに絶景の滝を眺めることができます。 目の前には1500万年前にできた一枚岩がそそり立ち、落差30mの岩間から白い滝がほとばしっています。マイナスイオンと白い水の粒子を浴びることで、旅の疲れが浄化されていきます。ザーッという滝の音に山全体から響く虫の鳴き声が重なって、自然のハーモニーを奏でていて、ヒーリング効果がすごいです。滝としばらく心でコミュニケーションできた感じがします。
人生の深みが増す旅へ
今日の旅の目的地である又吉コーヒー園は、沖縄コーヒーの手摘み体験や森林でのアクティビティが楽しめて、カフェコーナーやキャンプ場もあるという素敵なスポット。オーナーの又吉晃さんによると元々はツツジを栽培していて、利益が上がったので敷地を3万坪まで増やし、果物やコーヒーを栽培したそうです。又吉コーヒー園のコーヒーは質が良く、おいしいと有名で、「世界の大会で優勝するのが夢です」と、オーナーはおっしゃっていました。「70代でも夢や希望がいっぱいです」と、目を輝かせる又吉氏。コーヒーで活力が高まっているようです。 農園に入ると、いきなりオーナーに木の葉っぱを手渡されました。「これはなにか、食べてみたらわかるよ」とのことで、空腹だったのでありがたく葉っぱを食べると、酸味と心地よいしびれ感が。「これはニッキやシナモンと呼ばれている葉っぱだよ」とのことで、生のシナモンを食べるという貴重なハーブ体験をさせていただきました。沖縄で暮らしたら自生している葉っぱを食べて食費を抑えて生きていけるのでは? という希望が見えました。 続いて、さっそくコーヒーの実の収穫体験です。赤く熟した実を摘んでいくのですが、まず、オーナーに実を食べるようにすすめられ、こちらも生で食べてみたら意外と甘くておいしいです。コーヒーの実は果実ということを体感しました。甘みのある皮部分をむいた種が、コーヒー豆の元となります。まずはコップに一杯分の実を収穫することに。熟している実が全体の1割くらいで、蚊に刺され巨大蜘蛛に驚きながらも探す楽しさがありました。 収穫したあとは、若社長の又吉拓之さんがサポートしてくださいます。最初に、皮から種を取り出す作業が。手でやるので大変ですが、コツを掴むと楽しくなってきます。続いて種を洗ってぬめりを取り、網の中に入れて水気を飛ばします。火の上で網を振り続け、二の腕を鍛えられました。ここまでで半分くらいの工程でしょうか。乾燥させたあとは精米機に入れて殻を取り、扇風機の風で殻を飛ばします。 仕上げに種を豆にするため火にかけて20分ほど焙煎し、やっと茶色いコーヒー豆の状態に。リズミカルに網を揺らし、豆の音がまたヒーリング効果をもたらしてくれました。ミルで豆を引いたあとは、丁寧に蒸らしてからハンドトリップしていきます。この時、フィルターから落ちるコーヒーの水音を聞いていたら、轟の滝での水との交流を思い出し、水と会話できるような気がしてきました。なにか掴んだ感覚が……。 そしてついにマイルドで優しい味のコーヒーが完成。最終的にコーヒーを飲めるまで2時間半弱かかりました。これまで一杯1000円くらいする喫茶店に行くと内心ボラれている気がしていたのですが、今回体験してみてそれだけの労力がかかっていることがわかりました。コーヒー1杯の真価を知りました。 こちらのキャンプ場に泊まったら、星空を眺めて虫の声に包まれて就寝し、海からの朝日を拝んで美味しいコーヒーを飲むという最高の体験ができます。今回は夜のバーベキューに参加させていただきました。 キャンプ道具のレンタルサービスを利用すれば、スタッフがテントの設営、撤収などをやってくれるので食料を調達するぐらいで気軽にキャンプ体験できます。炎がパチパチ燃える音を聴きながらスマートフォンをオフにして、星空を眺めていたら視力が回復した気が。ありきたりの観光コースにないディープな旅行ができて、コーヒーの味わいのように人生に深みが増しました。
文・辛酸なめ子 写真・安井宏充(Weekend.)