「官能的」と話題の現代版『エマニエル夫人』が浮き彫りにする、現代社会の問題点
ソフトポルノ映画として70年代に一世を風靡した『エマニエル夫人』。『あのこと』(2021年)でヴェネチア国際映画祭を制した、オードレイ・ディヴァン監督が、ひとりの女性が綴った原作に立ち戻り、欧米男性主導の資本主義価値観を、エロティシズムを通じて批判する『エマニュエル』がついに2025年1月10日に日本で公開される。 【写真集】フランス映画『エマニュエル』の作品を切り取ったシーンギャラリー
香港へ渡るビジネスクラスで、隣の席の男性をトイレへと誘うひとりの女性。性への好奇心が使い果たされ、満足できないように見えるエマニュエルが、仕事先の高級ホテルで出会うのは日本人技術者ケイ・シノハラ。謎めいた彼に久しぶりに翻弄されるエマニュエルは、上司からホテルの落ち度を見つけ女性ジェネラルマネージャーを引きずり下ろすよう期待されている。しかし、巨大な豪華ホテルで様々な人物と出会い、性的体験を重ねるうちに、自身の欲求だけでなく、仕事の本質すら疑わざるを得なくなる…。 エマニュエルを官能的に演じるのは『燃ゆる女の肖像』(2019年)で絶賛され、米アカデミー賞6部門ノミネートを果たした『TAR/ター』(2022年)でケイト・ブランシェットと見事に渡り合ったフランス人女優ノエミ・メルラン。 物語の鍵となる日本人男性は、日本人の母をもつウィル・シャープが演じる。ヒットドラマ「ホワイト・ロータス」シーズン2(2022年)で主要キャストとなり、2025年のアカデミー賞ノミネートが確実視されている『リアル・ペイン~心の旅~』(2024年)でもキラリと光る存在となっている気鋭の俳優であり脚本家だ。 エマニュエルが自分を陥れるために派遣されたと知りつつ、彼女を導く女性GMの役は、2度のアカデミー賞ノミネーションを誇るナオミ・ワッツが務め、全体を引き締める。加えてNetflix「ストレンジャー・シングス 未知の世界」での全身特殊メイクが話題になった美形俳優ジェイー・キャンベル・バウアー、香港の名優アンソニー・ウォンも参加するなど豪華な顔ぶれが際立つ。 ディヴァン監督が徹底的に貫いた美的表現は圧倒的。刺激的なシーンの先にある、監視社会、デジタル・プラットフォーム、性的消費、コロニアリズムなどの問題点が浮き上がる瞬間を目撃してもらいたい。