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「どんないろでも めでたいメダル」は、私の主義 人気絵本『おやおや、おやさい』石津ちひろさんインタビュー

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好書好日

読んだ時に、気持ちが弾むように

――石津ちひろさんが文章を手がけた『おやおや、おやさい』(福音館書店)は、擬人化された野菜たちがマラソンに挑戦する物語。登場するのは、カボチャやラディッシュのほか、パプリカ、ニンジン、エノキなど。それぞれの野菜たちの生き生きとした個性ある表情、マラソンの躍動感が絵で豊かに表現されている一方、子どもたちが思わず口ずさみたくなる言葉が次々と登場する。「にんきものの にんにく きんにく むきむき」――拳をぎゅっと握ったニンニクが、勢いよく走りだす。 【写真】「どんな いろでも めでたい メダル」 絵本『おやおや、おやさい』の中身はこちら 言葉を発して読んだときに、気持ちが弾むようにしたいなと思うんです。読む人も、聞いている子供たちも楽しめるように。ある時、編集者さんから「好きなものは何ですか?」と聞かれ、「果物と野菜です」と答えたのがこの絵本が生まれたきっかけでした。最初に果物を主人公にした『くだもの だもの』(福音館書店)を出版。その後、野菜をテーマにした本作を書きました。 ストーリーは考えず、好きな言葉を沢山考えて、あとは編集者さんと絵を描く方におまかせするのが私のスタイルです。言葉は無意識に湧いてくるんですよ。調子のいい楽しい言葉を連ねる。「そらまめ そろって マラソンさ」という言葉とか。これは「そ」がアクセントになっていると思います。 ――ページをめくっていくうちに、読者も自ずと野菜たちの仲間になって絵本の世界に引き込まれていく。ゴールに向かい、けなげに走る選手たちの姿が耳と目で楽しめて、まだ言葉の意味が理解できない子どもにも伝わる。 純粋に野菜たちにまつわる言葉を楽しんでほしいと思います。私は特に「かぼちゃの ぼっちゃん かわに ぼちゃん」という言葉がお気に入り。カボチャが、開放感のある土手から川に転げ落ちて、周りの野菜たちが慌てふためく場面です。読み聞かせをするときは、1回目は私が読み、2回目は子どもたちと声をそろえて読む。とにかく繰り返して読むと、子どもたちの反応がよくなるんです。つかみになるというか。 私が講演会などで本作を読み聞かせした後に、しみじみした話や詩を作るワークショップをすると、子どもたちはよく話を聞いてくれます。ゲームにしか興味のなかった子が、本作をきっかけに言葉に興味を持ち始めてくれることも。言葉遊びをすると、自分の気持ちを言葉に託せるようになる気がしますね。言葉の響きを大切にできるようになり、詩を書きたいと言い出す子もいます。  ――絵を担当した山村浩二さんの細やかな描写も、子どもたちをひきつけてやまない。絵との相乗効果で、ストーリーは完結する。 絵を描く方との話し合いは特にないのですが、よくこんな楽しい絵を描いてくださったと嬉しくなりました。野菜たちが喜んだり、困っていたり……。一生懸命でけなげな様子を、愛情もって描いてくださったのが伝わってくる。中でも「はくさい はくしゅは てれくさい」のページが好きですね。沿道から応援の拍手を浴び、ハクサイの照れる表情が何とも可愛くて。最後に表彰台の場面があるのですが、ハクサイが3位に入賞しているのは山村さんのユーモアのセンス。あと、最初のうちは列の後方にいたハクサイが、どうして早く走れたのかわからない(笑)。オチというか、素晴らしいと思いましたね。 この場面にある「どんな いろでも めでたい メダル」の言葉は、私の主義かな。メダルなんて必要ない。勝ち負けが重要ではなく、それぞれのペースで走っていけばいい。子どもたちには、無理をしないで自分のペースで人生を歩んでいってほしいと思っています。

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