百貨店「正月閉店」 福袋売れず、稼ぎ頭はインバウンド 人手不足も背景に
百貨店やスーパーで正月の営業を見直す動きが広がっている。正月は1年のうちでも客数や売り上げが伸びる時期だが、来年は首都圏と関西で店を持つ大手百貨店が相次いで1月2日の休業を決めた。背景には人手不足に加えて、福袋の販売が減少傾向にあり、稼ぎ頭のインバウンド(訪日客)需要が春や秋にも盛り上がりをみせているという、消費動向の変化がある。 【写真】そこはもう「英国」。阪急百貨店の英国フェア 百貨店が長らく初売りを実施してきた1月2日、高島屋や阪急阪神百貨店、大丸松坂屋百貨店が来年は休業することを相次ぎ決めた。国内全13店舗を展開する高島屋は大阪店(大阪市中央区)などを23年ぶりに、大丸松坂屋百貨店も全15店舗を25年ぶりに休業する。 2013年以降、元日営業を続けてきたそごう・西武も改装中の西武池袋本店(東京都豊島区)など4店舗の初売りを1月2日に遅らせる方針を決めた。これで来年、都内で元日営業する主要百貨店はゼロになった。 阪急うめだ本店(大阪市北区)や阪神梅田本店(同)など、15店舗のうち計10店舗の1月2日休業を決めたエイチ・ツー・オーリテイリングの荒木直也社長は「1月2日は1年間で最も売れる。(休業すれば)単日の商売ではマイナス」としながらも、「お客さまにどれだけ長く寄り添うかを考えたとき、最大のパフォーマンスを出すのは従業員」とし、正月の休業が魅力ある職場づくりに欠かせないとの考えを強調する。 同業他社も「売り上げに影響は生じるが、それより働きやすさを優先する」(大丸松坂屋百貨店)など「労働環境の改善」を最大の理由に挙げる。スーパー業界も同じ狙いから早くから正月休業に乗り出しており、「ライフ」を展開するライフコーポレーションは20年から1月1、2日を、22年からは正月三が日を休業としている。 背景には小売業の人手不足の課題がある。人員の「過剰」から「不足」の割合を差し引いた小売業の雇用人員判断DIは、24年1~9月にマイナス47と不足感が強く、全産業のマイナス36を上回り、12月までの先行きも、マイナス49とさらに悪化する見通しだ。宿泊・飲食や建設、運輸・郵便などに次ぐ不足の状況下にあり、要因は「低賃金だけでなく、長時間労働や休日を取りづらい職場環境にある」(業界関係者)。 一方、正月休日をめぐる動きには、百貨店の売り上げの中身が変化していることも影響しているようだ。