ボッチャを通じたつながりづくりや共生社会の実現に向けて普及に取り組む平木さん（向日市森本町・向日市民体育館）

　コート上の白い目標球「ジャックボール」に向かって赤と青のボールを投げ合い、いかに近づけられるかを競う「ボッチャ」。パラリンピックの正式種目として知られる一方、障害の有無や年齢、性別などにかかわらず、誰もが一緒にプレーして楽しめるスポーツでもある。京都ボッチャ協会会長 平木新助さん（68）は、地域のつながりや共生社会の実現のため普及活動に取り組んでおり、「『共生スポーツ』として地域に広がってほしい」と優しいまなざしで語る。 　ボッチャと出合ったのは、南山城支援学校（京都府精華町）の校長をしていた2015年。東京で開かれた会議に出席した際、当時の日本ボッチャ協会理事長の講演を聞いた。「パラリンピックに出るような秀でた競技者でなくても、みんなで楽しめるのでは。学校でもやってみよう」。京都府内の特別支援学校の校長らにも働きかけ、授業や文化祭で取り組んだ。 　一方、特別支援学校の卒業生からは「卒業したら、ボッチャをできる場所がない」との声を聞いた。退職後、京都障害者スポーツ振興会や、地域での普及に取り組む京都の自動車販売会社と連携し、2019年に京都ボッチャ協会を立ち上げた。 　翌年には同協会で提唱する「ボーダレスボッチャ」と銘打った大会を初開催。障害者や高齢者、子どもらの約60チームが参加した。「参加者には一球一球を楽しんでもらえた」と手応えを得た。 　今では府民総体の交流種目にも採り入れられ、「単純にみえるかもしれないが、相手にとって『投げにくさ』を考えるなど、戦術面の面白さがある」と魅力を語る。一昨年からは学生が企画から行うボッチャ大会もスタート。「打ち合わせや運営を担ってもらうことで、どんな進め方をすると皆が楽しめるか、必要なことが見えてくる」と期待する。 　大会を運営できる人や地域でボッチャに取り組める環境を増やすなど、まだやらないといけないことはある。「頭を使った勉強も大事だが、実際に関わり合うことで理解が深まり、学びになる。障害のある人、ない人の持てる力を生かすため、どう支え合えるのか。ボッチャを通じて考えられれば」と力を込めた。