緊迫のウクライナ情勢、いま何が起こっている?プーチン大統領、武装勢力「独立」是非を21日に判断(解説):更新
(※1月25日掲載、最新の情勢にあわせて2月22日に更新しました。今後も随時更新します) 【全画像をみる】緊迫のウクライナ情勢、いま何が起こっている?ロシア軍“10万人”にNATOが対抗準備(解説) ロシアがウクライナとの国境周辺地域で軍備を増強しており、10万人規模ともされるロシア軍がウクライナに侵攻するのではないかと懸念されている。 旧ソ連圏のウクライナは、東をロシア、西はポーランド・ハンガリーなどのEU圏、南は地中海へとつながる黒海・アゾフ海に面している。 まさにロシアとヨーロッパに“挟まれる位置”にあり、国内でも親ロシア派と親欧米派が対立してきた。 こうした中で、ロシアのプーチン政権はウクライナのEU加盟やアメリカと西ヨーロッパの集団安全保障体制「NATO(北大西洋条約機構)」への加盟を警戒し、圧力をかけ続けてきた。 「ウクライナ情勢」が緊迫化するこれまでの大まかな政治的な経緯を、外務省の資料などをもとに簡単に振り返る。
緊迫化するウクライナ情勢、経緯をザックリおさらい
(1)2014年 親ロシアのヤヌコーヴィチ政権崩壊 きっかけは2013年11月のことだった。 ウクライナでは、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領がEUとの連合協定をめぐる交渉を停止。これを受けて、EU加盟に賛成する野党やヤヌコーヴィチ政権の汚職を批判する市民が大規模な反政府デモを起こした。 2014年2月半ばには100名以上の死者を出すデモにいたり、ヤヌコーヴィチ大統領はロシアに亡命。代わってヤツェニューク首相が暫定政権を発足させた。 (2)2014年 ロシアによるクリミア占領(クリミア危機) →武装勢力が「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」名乗る→2015年「ミンスク2」合意 ところが、これにロシアが報復措置ともとれる動きを見せる。 2014年3月、黒海に面したウクライナ領クリミア半島内の自治領「クリミア自治共和国」にロシアが自国民保護の名目で侵攻した。クリミア自治共和国では住民の約6割がロシア系とされる。 こうした中で「共和国政府」とセヴァストーポリ特別市が一方的に独立を宣言。違法な「住民投票」を実施し、ロシアはクリミア半島を違法に「併合」した。以降、ロシアによる一方的な占領状態が続いている。 クリミア半島にはロシア黒海艦隊の基地があり、ボスポラス=ダーダネルス海峡を経て地中海へと抜けられるため、ロシアにとって軍事的な要衝である。 ロシアによる不法占領を受けて、ウクライナ東部でも情勢が急激に悪化。ドンバス地方ではロシアへの編入を求める武装勢力が「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称し、一方的に独立を宣言。ウクライナはこれらを反政府武装勢力とみなし、占領された地域を取り戻すべく「反テロ作戦」を実施。戦闘状態に入った。 2014年3月、国連総会は「ウクライナの領土保全」について採決。「住民投票」の無効や他国によるウクライナの国境線の変更を認めないことを「賛成100、反対11、棄権58」の賛成多数で採択した。日本もウクライナ東部の情勢不安定化に関わっているとみられる人物などの資産凍結措置をとった。 ウクライナ東部での紛争激化を受けて、ロシア・ウクライナ・ドイツ・フランスの4カ国は、2014~15年に和平プロセスを定めた「ミンスク合意」(2014年:ミンスク1、2015年:ミンスク2)を締結した。 2015年の「ミンスク2」の主な内容は、武器の即時使用停止・外国部隊の撤退・OSCE(欧州安全保障協力機構)による武器使用停止の監視・ドンバス地方の「特別な地位」に関するウクライナの法律採択・OSCEの基準に基づく前倒し地方選挙の実施などだ。 しかしロシアとウクライナは、親ロシア派の反政府勢力が占領支配するドンバス地方に高度な自治権を持たせる「特別な地位」を認めるという条件やドンバス地方で実施される地方選挙のタイミングなどをめぐって対立。ミンスク合意に記された内容をどのような順番で履行するのか、動向次第では武装勢力の不法占領状態に法的根拠を与えることのなりかねないとウクライナは懸念している。 プーチン大統領は2019年4月、ウクライナ東部の武装勢力が支配するドンバス地方の住民にロシアのパスポート発行を認める大統領令に署名している。ただし、ウクライナでは二重国籍を認めていない。 (3)2019年 ウクライナ、将来的なNATO加盟方針 → ゼレンスキー大統領、親ロシア派と停戦合意 ウクライナは東部での情勢悪化を受けて、徴兵制の復活を含めて軍備増強を進めた。2019年2月には憲法を改正し、将来的なEU(欧州連合)・NATO(北大西洋条約機構)加盟を目指す方針を明記した。(※なおNATO側は、2008年のNATO首脳会議でウクライナの将来的な加盟を認めている)。 一方、2019年5月に就任したゼレンスキー大統領は、親EU路線をとりつつもロシアとも対話の用意があると表明。2020年7月、ようやくウクライナと武装勢力との間で停戦合意が実現した。ところが、2021年に入ってから停戦合意違反が増加。死傷者が相次いだ。 (4)2021年4月・10月 ロシア軍が国境に部隊配備「ウクライナのNATO加盟は認めない」 2021年4月と10月以降、ウクライナとの国境付近でロシア軍の増強が確認された。 ロシア側はNATOがウクライナを軍事的に支援し、ウクライナもロシアとの国境地帯に軍を集結させていると主張。軍事行動を正当化しようと企図しているようだ。 2021年12月10日、ロシア外務省はウクライナとジョージアの将来的なNATO加盟を認めた2008年NATO首脳会議の決定取り消しを求める声明を発表。NATOがこれ以上拡大しない確約や国境付近での軍事演習の停止を要求した。 これに対し、アメリカ国務省は「ロシア政府は、ウクライナとの国境に10万人以上の軍隊を配備し、現在の危機を引き起こした。ウクライナ側には同様の軍事活動はなかった」とロシア側の主張を否定している。 プーチン政権は冷戦後の1990年代からNATO加盟国が東ヨーロッパに拡大したことに不信感を持っており、特にNATO軍のミサイルが東ヨーロッパに配備されることを警戒している。 目下、ロシア・ウクライナ国境には10万人規模とみられるロシア軍が集結しているとされ、ウクライナ北部に面するベラルーシにもロシア軍が展開。2014年のクリミア占領時のようにロシア軍が再び侵攻するのではないかという懸念が生じ、軍事的緊張が続いている。